2017 Fiscal Year Annual Research Report
国際人口政策が開発途上国の人口政策および家計の資源配分に与える影響に関する研究
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17J09349
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
島村 由香 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 家族計画 / 出生行動 / 人口政策 / 家計内資源配分 / 農村社会 / ルワンダ共和国 |
Outline of Annual Research Achievements |
調査、研究報告ともに当初の計画通りに進めることができた。特に国内外の学会での報告を定期的に行えたことで、次の課題を効果的に特定することができたことに加え、論文執筆のペースも確立することができた。 【調査実績】 2017年9月にルワンダ共和国に渡航し、2週間に渡って調査を行った。 研究対象地域である東部州Kayonza群の医療施設計4か所にて、医療従事者に対する聞き取りを行い、専門家の視点からの問題点の把握を行った。また、当該地域の女性グループを対象に、フォーカスグループディスカッションを行った。女性たちが避妊法や副作用に関して日頃どのような情報交換を行っているかを把握するとともに、女性たちが実際に経験したホルモン避妊薬使用にかかわる問題点などを特定することができた。 【研究報告実績】 2017年6月に行われた日本人口学会では、2017年3月に実施した調査の結果をまとめ、ホルモン避妊薬を使用することによって生じる副作用が、女性の労働供給に与える影響について報告を行った。10月に行われたInternational Conference on Population (ICP) では、リプロダクティブヘルスが家計の厚生にどのようなインパクトを与え得るかについての考察をポスターにまとめ報告した。ICPでは、国内外の研究者からの様々なフィードバックにより、アフリカの人口問題、リプロダクティブヘルスに関する研究の多様性に触れ、新しい視点や手法に関する知識を得ることができた。当該分野の研究者とネットワークを構築することができたことも大きな収穫となった。11月に行われた国際保健医療学会では、9月に実施した調査結果を分析したものを中心に、家族計画サービスを普及する上での課題をまとめ報告した。現在は国際誌『Studies in Family Planning』への論文投稿準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に則り、避妊法の選択と副作用の影響、さらにそれらの労働供給を通じた農業生産への影響等について、フィールド調査を中心に明らかにすることができた。特にこれまで把握が難しかった医療的観点からの理解について、知見を得ることができた点が評価できる。また、2017年度JICAインターンシップ(博士型)の機会を利用し、World Vision Rwanda が実施する、『ルワンダ共和国東部州における小規模生産者グループの経済活動及びマネジメント向上支援プロジェクト』という草の根事業の専属インターンとして、自らの調査対象地域にて2か月に渡って活動を行った。農業生産や、それを巡る人々の行動、社会情勢、文化・制度・歴史等をより深く理解する機会を得ることができた。農業生産および農家家計の資源配分に与える影響を分析するに当たり、当該地域の農業生産体系および農家家計の経済行動を観察することを研究計画の一部としていたが、本渡航により従来よりも長期に滞在することができ、当該コミュニティの特徴をより深く理解する貴重な機会となった。活動に当たってはこれまで培ってきた家計調査の手法や分析手法を生かすことができ、研究者として貢献・還元することができたと考える。また、2018年9月には調査を計画しているが、滞在中は通訳兼調査アシスタントとも打ち合わせを行い、調査計画の大枠について議論することができた。さらに、当該インターンシップを通じて、開発途上国における援助業務に関して経験するとともに、本研究に関連するものも含め、人的ネットワークを構築することもできている。また調査結果については、国内・国際学会にてそれぞれ報告を行い、発信に努めるとともに多様な専門家と意見交換を行っている。以上より、本研究については、期待以上の研究進捗があったと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
8月から9月にかけて、博士課程在学中最終となるデータ収集を行う予定である。調査に向けては、指導教官、通訳兼アシスタントとルワンダ教育省へ調査許可証の申請準備を行うとといった準備を進めるとともに、詳細な計画を立てているところである。当初予定していたベルギーへの渡航に関しては、収集可能なデータ・資料、然るべき研究機関および専門家を特定中であり、さらなる検討・調整を必要とする。 本年度以降は、学会での発表、国際誌への論文投稿など、これまでの研究成果の発信にも積極的に努める予定である。2018年6月に行われる第70回日本人口学会での報告が決まっている他、11月に行われるInternational Conference on Family Planningに報告申請中である。特に後者はルワンダの首都Kigaliで行わることから、本研究が政府関係者等へのアウトプットの機会にとなることが期待できる。また、サハラ以南アフリカを対象とした研究、家族計画により焦点が絞られた研究が集結することが予想され、同学会への参加意義は大きい。また、現在これまでの蓄積をもとに三本の論文を執筆・投稿準備中中である。 本研究からさらに視野を広げ、当該分野の知見及び人的ネット―ワークを構築するため、人口研究やアフリカ研究に関する研究会や勉強会にも積極的に参加し、当該分野の研究者と議論・意見交換を行う機会も増やしている。すでに6月には、人口学研究会での報告を控えており、人口学研究の専門家との意見交換できる機会になることが見込まれる。
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