2017 Fiscal Year Annual Research Report
動的不斉ナノ空間の遠隔制御を可能にする刺激応答性のペプチド含有超分子の創成と応用
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17J09409
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
間宮 文彦 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 面性キラリティ / マクロサイクル / らせんペプチド / 人工チャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はこれまでに得られた知見をもとに、このマクロサイクル骨格を用い、ラセミ分子の不斉選択的透過能や、不斉触媒能を有する新規機能性人工チャネルを構築するため、不斉空間を有するマクロサイクルの脂質二分子膜中への導入、およびイオン種に対する透過能および選択性についての検討を行った。 まず、一方向巻きの8量体らせんペプチド鎖が6本導入された面性キラルなマクロサイクルが、脂質二分子膜中で人工イオンチャネルとして機能するかどうかについて検討を行った。その結果、マクロサイクルが脂質二分子膜中に取り込まれ、pH勾配を駆動力としてナトリウムイオンがマクロサイクルを介して脂質二分子膜を透過することが分かり、人工イオンチャネルとして機能することが明らかとなった。 続いて、マクロサイクルが有する透過能について検討を行った。既に透過可能であることが確認されているナトリウムイオンの他に、1価のアルカリ金属イオンに対しても同様に透過能を有するかどうかについて検討を行った。その結果、1価のアルカリ金属イオン(Li+, K+, Rb+, Cs+)に対して選択性は発現しなかったものの、透過能を有することが明らかとなった。このマクロサイクルに導入されているペプチド鎖を修飾することで様々な機能を有する官能基が導入可能であると予想され、今回得られた結果は、今後、不斉触媒能や不斉識別能を有する機能性人工チャネルの創製において非常に重要な知見であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに得られた知見をもとに、らせんペプチド鎖を有する面性キラルなマクロサイクルが人工チャネルとして応用可能であるかどうかについて検討を行った。この面性キラルなマクロサイクルをベシクルの脂質二分子膜中に導入し、ベシクル内部に包接させた色素のpH変化に基づく蛍光強度変化を測定することにより、マクロサイクルを介して、各種イオンが伝達するかどうか詳細に検討を行った。その結果、このマクロサイクルは脂質二分子膜中に取り込まれ、ナトリウムイオンをはじめとする1価のアルカリ金属イオンを透過可能なイオンチャネルとして機能することが明らかとなった。さらに、分子動力学法によるシミュレーションの結果から、このマクロサイクルが脂質二分子膜中で水分子を取り込み、安定化することも明らかとなり、水分子を透過可能な人工チャネルとして機能することも期待される。これらの成果は、今後、不斉触媒能や不斉識別能を有する機能性人工チャネルの創製において非常に重要な知見であると考えられ、学術論文として取りまとめ、国際的な学術雑誌に投稿予定である。以上の研究成果により、本年度は当初の期待通りの進展があったと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに得られた知見をもとに、らせんペプチド鎖に機能性官能基を導入し、マクロサイクルが有する面性キラリティを利用することで、脂質二分子膜を介した物質の不斉選択的な透過や、不斉触媒能を有する機能性人工チャネルの創製に挑戦する。さらに、マクロサイクルに導入されたらせんペプチド鎖の、310-/α-ヘリックス転移の制御によるナノ空孔(チャネル)の開閉や、これまでに例の無い外部刺激に応答して触媒活性を自在に”ON-OFF”可能な反応性人工チャネルへの応用に挑戦する。
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Research Products
(2 results)