2017 Fiscal Year Annual Research Report
CFRP接合構造におけるコーナ欠陥とキッシングボンドの検出
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17J09444
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
芦澤 剛 東京工業大学, 工学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | CFRP / 非破壊検査 / 超音波 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はCFRP部材を接合して用いるCFRP接合構造における非破壊検査法の開発を研究目標としている。CFRPがこのような複雑な形状を持つ場合、CFRP自体が曲がっている部材を用いる場合がある。その場合CFRP内部の炭素繊維は直線形状ではなく曲線形状となる。CFRPは異方性材料であり、繊維方向に対する角度によって超音波伝搬挙動も変化するため、直線形状繊維CFRPの場合と曲線形状繊維CFRPの場合とでは、超音波伝播挙動が変化することが予想された。 そこで本研究ではまず、直線形状繊維CFRPと曲線形状繊維CFRPを伝搬する超音波挙動を比較するために、数値解析を行った。直線形状繊維CFRPを模擬するための直交座標系に基づいた有限差分法のプログラムと、曲線形状繊維CFRPを模擬するための円筒座標系に基づく有限差分法のプログラムを作成した。これらを用いて2次元超音波解析を行った。まず直交座標系に基づく解析では、直線繊維CFRPに対して超音波を入射した場合、繊維方向に対して斜めに超音波を入射しても、超音波が繊維方向に流れるという、よく知られた結果を得ることができた。これに対し、円筒座標系に基づく2次元超音波数値解析では、炭素繊維が原点を中心に同心円形状となるような曲繊維を持つCFRPを模擬した解析を行った。数値実験の結果から、同心円形状曲繊維を持つCFRP内部で超音波を発生させた場合、発生して間もない超音波の波面は、直線形状繊維CFRP内部で発生させた場合と同様に、異方性の影響を受けて繊維方向に伸びるような形になるが、超音波が伝搬していくにしたがって、波面が原点を中心に周方向に歪んでいくことを示した。これは、周方向に曲がって配置されている繊維の方向の影響を受けたからだと考えられる。 以上のような曲線形状繊維CFRPを伝搬する超音波挙動を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、CFRP接合構造におけるコーナ部の超音波伝搬挙動を調べるために、曲線形状繊維を有するCFRPを伝搬する超音波の数値解析を行う予定であった。実際に本研究で曲線形状繊維CFRPを解析するためのプログラムを作成し、数値解析を実施した。当初の予定では、GPUを用いた計算を行う予定であったが、計算規模は予想よりも小さかったため、今回はGPUを用いずに計算することができた。この数値解析によって、曲線形状繊維CFRPを伝搬する超音波は繊維に沿うようにして曲がるという知見を得ることができた。 さらに当初の予定では、曲線形状繊維を有するCFRP試験片を作成して、実験的にこの挙動について調べる予定であった。当初の予定では金型を用いて試験片を作製する予定であったが、実施が困難であった。しかしながら、3Dプリンタによる成形技術を使用することで試験片を作製することができた。現在実験を行っており、数値解析結果に見られた挙動を裏付けるような結果が得られつつあるがまだ考察が不十分であるため、これについては今後も考察と追加の実験を行いながら詳しく調べる予定である。 上記の成果は、学会発表及び論文投稿によって発表することができた。以上のことから、研究はおおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初、超音波の理論について学ぶためにETH Zurichへの留学を予定していたが、現在超音波の理論についてより深く学びながら研究をすすめるために、実際にETH Zurichにて約半年間の研究指導委託を受けている。受け入れ研究室の過去の研究に、平板中で発生するアコースティック・エミッションを一つのセンサで受信し、時間を反転させた信号を入力することで、アコースティック・エミッションの発生位置を同定する研究が行われてきた。この手法の原理は、本研究で用いているレーザーを用いた超音波可視化装置の原理と密に関連している。この研究をCFRP材料に応用する研究を行い、CFRPの超音波伝搬挙動を解明していく本研究に役立てることができるのではないかと予想している。 今後の研究では、これまでの研究で、数値解析結果について検討するために、曲線形状繊維を有するCFRP試験片を作製し、超音波伝搬挙動を調べる実験を行った。この実験では数値解析結果によって得られた知見が妥当であることを支える結果が得られたが、現段階ではまだ不十分であるため、今後条件を変えながら実験を行ってすすめていく予定である。
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Research Products
(8 results)