2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J09454
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中野 顕正 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 能楽 / 謡曲 / 世阿弥 / 禅竹 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、能(謡曲)の作品が、同時代の文芸・文化史的背景の中からいかにして生まれ、そうした世界が個々の作品の中でいかに受け止められているかを解明することにあった。最終年度にあたる本年度は、一年目で蒐集した諸知識に基づきつつ、それを援用する形で個々の能作品の解釈を試み、以下の点で新規性を得ることができた。 従来の能作品研究では、作中に登場する様々な知識が他のいかなる書物に共通して見られるか、といった観点から、同時代における同一理解の広がりを指摘する手法が中心的であった。こうした従来の研究は極めて重大な意義をもつものであったが、一方で、その知識が作中のその場面に援用されなければならない必然性について考え、能作品を劇文学という一つの構造体として理解しようとする観点は相対的に低調であった。 本研究では、作品の背景・周辺に類例を求める従来型の研究方法をも継承した上で、それが一つの構造体としての作品理解の上でいかなる意味を持つか、という観点から考察を行い、典拠研究と作品解釈とを架橋する新しい研究を示すことができた。その成果としては、能《野宮》の構想について、同時代の宗教言説を踏まえつつ、作品構造の中でその知識を援用すべき必然性について論じた「能《野宮》における聖俗の転換」(『中世文学』64号)が特に挙げられる。 また、そうした、典拠理解を十分に踏まえた上で作品を一つの構造体として解釈するという方法は、能作品を典拠とする他分野の作品にも応用することができた。その成果としては、一休宗純が能作品を題材に詠んだ漢詩について、典拠である能作品からの読み替えの方法について考察した「一休宗純が能に求めたもの ―《通小町》関連詩三首の検討から―」(『松岡心平先生退官記念論集(仮)』、2020年刊行予定)が挙げられる。 上述の如き展望を得ることができた点において、本研究は大きな意義を有するものであった。
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Research Progress Status |
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(6 results)