2017 Fiscal Year Annual Research Report
藩財政の構造と中央市場・地域社会―鹿児島藩を中心として―
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17J09458
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福元 啓介 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 薩摩藩 / 鹿児島藩 / 藩財政 / 藩政 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は研究実施計画に基づき、(1)鹿児島藩(薩摩藩)の財政構造と大坂との関係を分析するための史料調査・収集(佐古慶三教授収集文書等)、(2)鹿児島藩(薩摩藩)の国産品開発と全国市場・地域社会を分析するための史料調査・収集(玉里島津家史料、島津家本、島津家文書、蒲生御仮屋文書等)を行った。 (1)については、薩摩藩と関係した大坂両替商・近江屋楢之助、薩摩問屋・薩摩屋仁兵衛関係史料を分析し、天保七年の藩債整理後における大坂銀主集団の動向を中心的に検討した。その結果、藩債整理を契機に新たな銀主集団が出現し、藩との関係を深めていく様相を明らかにできた。加えて、旧来の銀主も引き続き藩との関係を継続していく様子を析出した。これらの成果として、JSPS-CNRS日仏二国間セミナーにおいて報告を行った。 (2)については、安政期における薩摩藩の国産錫振興に関する対幕交渉についての一件史料を中心的に分析した。幕府の大砲鋳造需要に応えつつ、拝借金の実現に向けて交渉を進める薩摩藩の姿を明らかにし、その成果は第115会史学会大会において報告した。 また同じく(2)について、薩摩藩の年貢米収支とその特徴に関する分析を行い、藩財政構造の基礎的な検討を行った。結果、年貢米の収納を実現する下代蔵の編成状況や、年貢米中の赤米比率、砂糖生産を担う南西諸島における米需要と大坂への廻米状況の連動を明らかにした。この成果として『東京大学日本史学研究室紀要』に論文を投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度は、鹿児島藩(薩摩藩)と関係した大坂銀主集団に着目し、史料の収集を重点的に行った。これにより、近世後期の館入銀主集団の構成員など基礎的な情報を集めることができた。しかし、後述のように計画の前倒しで国産品関係の史料収集を並行して行ったために基礎的なデータの蓄積と整理にとどまってしまった。今後は成果を論文として執筆していく必要がある。 また研究計画を前倒し、藩の国産品をめぐる史料についても特に年貢米との関係を分析する観点から史料を収集した。これにより藩財政の基本的な構造に迫ることができたが、近世後期における国産品の振興それ自体が藩財政の中にどのように位置づくのかを検討していかなければならない。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題(1)鹿児島藩(薩摩藩)の財政構造と大坂との関係については、蓄積したデータを踏まえて藩財政上の借銀の位置づけと、銀主集団個別の関係を追究する。特に古銀主と呼ばれる旧来の銀主と、新組銀主とよばれる新たな銀主を対比する形で、それぞれの藩との関係を検討していく。 また研究課題(2)鹿児島藩(薩摩藩)の国産品開発と全国市場・地域社会については、個別の国産品に着目した検討を行いたい。具体的には日向諸県郡における山産物仕法に着目し、大坂の問屋等との関係、江戸市場への進出などを検討し、藩がこれらをどのように財政の上に位置付け、また産地の地域社会にどのような影響を与えたのかを考察していく。
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