2017 Fiscal Year Annual Research Report
癌細胞の代謝変化においてニューロピリン1陽性マクロファージが果たす役割の解明
Project/Area Number |
17J09462
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
津田 萌 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 乳癌 / 免疫 / 代謝リプログラミング / ニューロピリン1 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌細胞はミトコンドリア機能を低下させ解糖系代謝を亢進させることにより、低酸素などの過酷な環境下でも活発に増殖することができる。さらに、癌細胞は微小環境における様々なストレスに応じて転移・増殖に有利となるよう代謝経路を多様に変化させることも知られている。本研究の目的は、この癌細胞の代謝シフトにおいて免疫細胞がどのような役割を果たすのかを明らかにすることである。特に、抗腫瘍免疫のコントロールにおいて重要な役割を果たすことが知られるニューロピリン1陽性マクロファージに着目し、癌細胞代謝リプログラミングのメカニズムを解明していく予定である。 今年度は、まず癌細胞代謝リプログラミングの詳細を解明する目的で乳癌細胞株4T1とBALB/cマウス由来脾細胞の共培養を行い、その前後の癌細胞ミトコンドリア機能の比較を行った。その結果、共培養後に癌細胞のミトコンドリア機能が低下する可能性が示唆された。さらにCD11b陽性免疫細胞との共培養においてミトコンドリア膜電位が特徴的に低下することを確認した。また、ミトコンドリア阻害薬であるメトホルミンに対する腫瘍細胞の感受性を共培養前後で比較したところ、共培養後に感受性が低下する(薬剤耐性を獲得する)可能性も示唆された。メトホルミン以外の薬剤に対する感受性変化も現在検討中である。 今後は、ニューロピリン1陽性マクロファージの抽出やそのノックダウンなどを用いた実験系を確立させ、in vitro、in vivo双方で癌細胞代謝シフトにおけるニューロピリン1陽性マクロファージの役割を解明していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者はこの一年間、癌細胞代謝シフトにおける免疫細胞の役割について研究を進めた。免疫細胞の存在下では癌細胞のミトコンドリア機能が低下することやミトコンドリア膜電位に変化が生じることをin vitroで示すことに成功した。また、免疫細胞の影響により癌細胞が薬剤耐性を獲得する可能性も示唆された。しかしニューロピリン1陽性マクロファージに特化した実験系が確立できておらず、本研究の主目的である「癌代謝シフトにおけるニューロピリン1陽性マクロファージの役割」に関しては今後in vivo、in vitro双方で研究を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
我々はこれまでに、癌細胞の代謝シフトの詳細を解明する目的で乳癌細胞株4T1とBALB/cマウス由来脾細胞の共培養を行いその前後におけるミトコンドリア機能を比較することで、共培養後に癌細胞のミトコンドリア機能が低下する可能性を見出した。さらに、特定の免疫細胞との共培養においてミトコンドリア膜電位が特徴的に低下することも確認した。 今年度は、まずMagnetic cell sorting (MACS)法やフローサイトメトリー法により様々な免疫細胞を分離採取し、共培養に用いる免疫細胞群を変化させることで癌細胞代謝シフトにどのような変化が生じるかを観察する予定である。また、特定の免疫細胞群において特徴的な代謝シフトが認められた場合には、ニューロピリン1の発現量変化を調査し、詳細なミトコンドリアの質的・量的評価もすすめていく。 つぎにミトコンドリア阻害作用を持つ複数の薬剤を用いて薬剤感受性試験をin vitroで行い、免疫細胞との共培養前後で腫瘍細胞の薬剤感受性がどのように変化するかの検討を行う。本実験系においても共培養に用いる免疫細胞群を変化させて癌細胞の薬剤感受性を比較し、代謝シフトと薬剤感受性の相関を評価する。 さらに、ニューロピリン1陽性マクロファージを抽出しニューロピリン1をノックダウンすることで、共培養による癌細胞の代謝リプログラミングにどのような変化が生じるかを観察し、癌細胞代謝リプログラミングにおけるニューロピリン1陽性マクロファージの役割を解明していく予定である。
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Research Products
(1 results)