2017 Fiscal Year Annual Research Report
子どもの言語学習における視線追従及び母親の発話スタイルの関係性についての検討
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17J09483
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
和泉 絵里香 名古屋大学, 情報科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 語彙発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
母親からの言語入力の特徴が子どもの語彙発達にどのような影響を与えるかは,言語発達分野における重要な問題の1つである。最近の研究では,ブラジルポルトガル語話者において,9,13ヶ月時点で疑問文発話の多い母親の子どもは18ヶ月時点での産出語彙数が多かったことが示されている (Goncalves Barbosa et al., 2016) 。この結果は,疑問文発話が子どもの語彙発達を促進する傾向があることを示しているが,日本語話者で先行研究と同様の疑問文の影響が見られるのか,また,疑問文の種類 (yes/no疑問文,wh疑問文) によって影響が異なるかは明らかになっていない。そこで本研究では,母親がいつ,どんな疑問文を,どれくらい発話することが子どもの語彙発達に影響しているかを縦断的に検討することとした。 実験参加者は日本語話者の母子26組で,子どもが14ヶ月と19ヶ月の時に研究に参加してもらった。それぞれの月齢で,実写動画を視聴し,その内容について自由に発話する行動実験を行なった。また,行動実験終了後,子どもの語彙数測定のため,母親が子どもの産出語彙数についての質問紙に回答した。 yes/no疑問文とwh疑問文それぞれの発話頻度と子どもの産出語彙数の関係についてピアソンの席率相関検定を行なった結果,同時点では母親の疑問文発話と子どもの産出語彙数の間に有意な相関はなかった。一方,14ヶ月時点での子どもの産出語彙数とは関係なく,14ヶ月時点での母親のwh疑問文発話と19ヶ月時点での子どもの産出語彙数との間に正の相関があった。この結果は,日本語話者において,母親のwh疑問文発話の個人差が子どもの語彙発達に影響している可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在まで,14,19ヶ月のサンプルについて,発話データと産出語彙数データの取得,データ分析,統計解析が完了している。現在は,この内容について発表するため,論文を執筆している最中である。 また,今後の研究のため,14,19ヶ月時点で実験に参加した子どもの27ヶ月児の産出語彙数データの取得を進めている。4月時点で20名分のデータ取得,データ分析が完了しており,10月中旬には26名分全ての産出語彙数データの取得が完了する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,現在まで集めたサンプルに27ヶ月時点での産出語彙データを追加し,子どもの語彙発達段階に応じた疑問文の影響について検討を行う予定である。現在データを取得している14-19ヶ月は,語彙爆発前の時期にあたり,子どもの語彙発達は緩やかである。一方,19-27ヶ月は語彙爆発時期にあたり,子どもの語彙は急増する。このことから,それぞれの時期に特有の疑問文発話の影響があることが考えられる。そこで,14,19ヶ月時点での母親の疑問文発話と27ヶ月時点での子どもの産出語彙数の関係を見ることで,これまでの研究で見られたwh疑問文の影響が見られるのか, yes/no疑問文の影響が新たに見られるのかどうかを検討する。 実験参加者は,14,19ヶ月の時に研究に参加した母子26名で,子どもが27ヶ月の時に参加してもらう予定である。実験方法は,事前に許可を得た参加者に対してマッカーサー言語発達質問紙 (以下CDI) を郵送し,それに母親が回答する形で行う。子どもの産出語彙数は,CDIで母親がチェックをつけた数をそのままCDI発話得点とする。子どもの産出語彙数の個人差の影響を小さくするため,統計分析の際は子どもの産出語彙数を対数に変換する。 分析は,14,19ヶ月時点の母親の各文タイプの発話文数と子どもの産出語彙数についてピアソンの積率相関分析を行う予定である。また,14,19ヶ月時点での母親の疑問文発話が子どもの産出語彙数に与える影響を検討するため,14ヶ月時点での母親の発話の影響を検討する際は14ヶ月時点での子どもの産出語彙数を,19ヶ月時点での母親の発話の影響を検討する際は19ヶ月時点での子どもの産出語彙数をそれぞれ調整した変相関検定を行う予定である。結果の予測として,14,19ヶ月時点の母親のwh疑問文発話が27ヶ月時点での子どもの産出語彙数に影響していることが考えられる。
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Research Products
(1 results)