2017 Fiscal Year Annual Research Report
地震後の早期復旧を可能とする鉄筋コンクリート造損傷制御型建築構造システムの構築
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17J09579
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小原 拓 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | アンボンドプレキャストプレストレスト造壁 / 損傷制御性能 / 圧縮側損傷評価 / Multi-Springモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
国内で発生すると考えられる地震に対して,鉄筋コンクリート(RC)造建物の機能維持および早期復旧を確保するために,アンボンドプレキャストプレストレスト(PCaPC)構造形式を用いたRC造壁の確立を行った。 アンボンドPCaPC造壁の損傷に基づいた機能維持性能を評価するために,せん断スパン比が1.0および2.0の全2体の実大規模の静的繰り返し載荷実験を行った。荷重変形角関係において,両試験体とも高い原点指向性を示し,せん断スパン比が1.0の試験体では残留変形角が部材変形角R=1.5%まで継続使用性を示す結果となり,せん断スパン比が2.0の試験体では部材変形角R=4.0%まで継続使用可能な状態であった。この結果は先行研究で実施されたRC造壁の部材変形角R=0.7%を大幅に上回る結果となり,アンボンドPCaPC造壁部材の高い機能維持性能を示した。さらに,PC鋼材および軸方向組立筋のひずみ,コンクリートの圧縮ひずみに着目して損傷評価を行った。コンクリートの圧縮ひずみでは,壁端部の損傷状況と照らし合わせ,壁に発生する損傷度と圧縮ひずみの関係を定量化し,部材端部での圧縮ひずみが0.78%~1.13%に到達するまでコンクリートの剥落が生じないことを明らかにした。 解析では,先行研究であるアンボンドPCaPC造梁および部分架構実験を対象に,Multi-Springモデルを用いた数値解析モデルを示した。この数値解析モデルは荷重変形関係のみならず,性能評価型設計の基礎となる損傷度および各種限界状態を再現できることに特徴がある。本研究では,壁部材のような軸力が導入される場合にも適用し,非常に高い精度で荷重変形角関係を追跡できることを示した。また,実験結果から確認されたコンクリートおよびPC鋼材,軸方向組立筋,残留変形角を高い精度で再現し,部材の各種限界状態と決定要因を予測できることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は,2体の静的繰り返し載荷実験を実施し,アンボンドPCaPC造壁の損傷制御性能を定量化できた。また解析では,壁の損傷を定量的に評価できるモデルを示し,計画通り研究が進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
エネルギー消費要素を付加したアンボンドPCaPC造壁の実験を行い,損傷を定量的に評価し,解析モデルを精緻化する。エネルギー消費要素の面積を実験変数とすることで,せん断力上昇分がどの程度,壁の損傷度に影響を及ぼすか検討する。また,前年度実施した試験体と比較しながら壁の各種限界状態に着目した損傷評価を行う。 解析では,エネルギー消費要素をせん断バネとしてモデル化し,実験で確認した復元力特性およびコンクリートの圧縮側損傷,PC鋼棒のひずみ等を再現できるか検討する。また多層建物モデルに提案した壁モデルを組み込み,全体の履歴復元力特性を検討すると同時に,アンボンドPCaPC造壁の損傷状態を評価することで,設計者が設計し易い状況を整える。
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