2018 Fiscal Year Annual Research Report
フランスの現代思想家ジル・ドゥルーズの存在論と超越論哲学の比較研究
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17J09606
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
浅野 修平 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | ドゥルーズ / 超越論哲学 / 認識論 / カント / スピノザ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度研究員は、前年度に引き続き、ドゥルーズがポスト・カントからのカント批判を十分に踏まえつつも、独自の仕方で批判哲学を書き換えることで、カントの真の後継者であるニーチェ=ドゥルーズ哲学を構築していることを示す、という課題に取り組んだ。特に今年度は、ドゥルーズ哲学におけるカントとニーチェをつなぐ思想家としてスピノザの重要性を浮き彫りにし、ドゥルーズ自身明示的には描いていないものの、カント-スピノザ-ニーチェの系譜がドゥルーズ哲学の中に存在していることを示した。また以上の成果から、ニーチェ=ドゥルーズの哲学が自ずと明らかになるように諸々の哲学を解釈することで、諸々の哲学を自身の哲学へと接続するといった、ドゥルーズ独自の哲学のスタイル、つまりドゥルーズ哲学における歴史哲学の面を浮き彫りにすることにも成功した。 加えて、①カントの批判哲学の唯一の徹底者として、つまり、カント自身考案したにもかかわらず、十分には遂行することのできなかった「批判」の概念の真の後継者としてニーチェを提示するドゥルーズの解釈を精査することを通じて、ドゥルーズ哲学のモチーフの中核に「批判」が位置していることを明らかにし、②「批判」の概念を軸に据えることで、ドゥルーズ自身明示的には描いていないものの、カント-スピノザ-ニーチェの系譜がドゥルーズ哲学の中に存在していること、以上二点の成果を、研究員は査読付き論文誌早稲田大学大学院 文学研究科紀要第64輯で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度を通して研究員は、カント-スピノザ-ニーチェの系譜がドゥルーズ哲学の内に明確に存在し、そしてまたこの三者を結びつけることをドゥルーズに許すものが批判の概念である、という成果を得ることとなった。この成果から、批判の概念の徹底として歴史を読み解く哲学としてドゥルーズ哲学を読み解くことができる、という重要な見通しを得ることができた。 さらに研究員は、以上の成果を文学研究科紀要(査読付き)において発表し、査読者からの一定の評価も受けることができた。この業績は今年度の研究の順調な進展を示すと同時に、来年度の研究への重要な見通しを獲得したという点で、研究員にとって少なくない意義があると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究成果からドゥルーズ哲学の方法とヘーゲル哲学の方法を比較検討する可能性が生じてきた。フォイエルバッハが「ヘーゲル哲学の批判」で指摘しているように、ヘーゲル哲学の方法は、ヘーゲルが過ごした時代もしくはヘーゲル哲学を一つの絶対的な終着点とした上で、そこに連なる形で哲学史のみならず、あらゆる歴史を契機として解釈することで自身の哲学を構築するというものである。そうすると、ジャン・ヴァールが「『ニーチェと哲学』」でも指摘しているように、こうしたヘーゲル哲学の方法とドゥルーズ哲学の方法はよく言われているほどには遠いものではないと言えるだろう。従来の研究では、現代フランス哲学とヘーゲル哲学の対立がクローズアップされる傾向にあったが、むしろ今必要なのは、両者の哲学の方法が有する共通点を厳密かつ厳格に提示し、その上で比較検討することではないだろうか。ドゥルーズ哲学が、目的を設定することのない差異の永久革命、つまり「永劫回帰」の運動を描くものであり、その一方で、ヘーゲル哲学が目的を設定し、そこに至る精神の運動を描くものと言ったところで何も得るところはない。なぜなら両者の方法は極めて類似しているのであり、ヘーゲルが自身の過ごした時代を終着点として哲学を構築しているのなら、ドゥルーズもまた、自身の過ごした時代、つまり構造主義の時代、さらにはゲバラやカストロなど政治的革命の時代を終着点として哲学を構築しているのであり、その結果として、「永劫回帰」の哲学が生じてくるからである(それゆえ以上の点に関して方法論的には本質的な差異はない)。今後の研究の推進方策としては、まずは両者の哲学の共通点を浮き彫りにすることから始め、その上で両者の差異を提示することに注力し、現代フランス哲学とヘーゲル哲学の対立の意義も理解するべく努めたい。
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Research Products
(1 results)