2017 Fiscal Year Annual Research Report
Hopf代数ゲージ理論を用いたスピン液体とトポロジカル秩序の研究
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17J09658
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
越田 真史 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | アフィン・リー代数 / 共形場理論 / シュラム・レヴナー発展 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は当該の研究題目と関連が深い頂点代数の応用として、アフィン・リー環の対称性をもつ可積分階層に関する研究を行った。BakalovとFleisherはアフィンsl2のボソン化を用いて、新しい可積分階層を提唱した。本研究ではこの内容を次のように発展させた。1.BakalovとFleisherのボソン化を脇本表現とFriedan-Martinec-Shenkerのボソン化を合成したものとみなすことで、一般のリー環に拡張した。2.得られた可積分階層に対して、無限次元空間上の平坦接続を用いた定式化を与えた。これは広田双線形方程式によって定義された方程式の可積分性を明らかにするものである。 また、当該の研究題目と関連が深い共形場理論(CFT)の応用として、シュラム・レヴナー発展(Schramm-Loewner evolution; SLE)の研究を行った。SLEとは臨界現象における相境界を記述する確率過程であるが、これに内部自由度を加えたものについて、次の研究を行なった。1.「群論的定式化」の確立:SLEとCFT対応関係の「群論的定式化」を内部自由度のある場合に拡張した。2. 内部自由度のあるSLEの一般化:前項1.における内部自由度のあるSLEに対する「群論的定式化」を用いて、内部自由度のあるSLEを一般化した確率過程を導入した。3. 内部空間の確率過程の構成:前項1.における「群論的定式化」に基づき、内部空間がSL(2)の場合にその上の確率過程を具体的に構成した。すなわち、内部空間SL(2)に適切な座標を導入して、その座標に関して確率微分方程式を書き下した。4. 局所マルチンゲールの計算:前項3.において内部空間がSL(2)の場合にその上の確率過程を構成したので、これを用いて、局所マルチンゲールの構成を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は一般化Kitaev模型の構成を行う予定であった。そのための第一段階としてtoric code模型とKitaev模型の関係を詳細に研究した。その結果として、Kitaev模型のハミルトニアンからtoric code模型のハミルトニアンを有効ハミルトニアンとして得る際に、局所的なヒルベルト空間の次元が半分に減る現象をゲージ特定の結果と解釈した。次に、上記の描像を一般おquandum double模型に拡張することを試みた。当初の想定ではこの際に、物質場に相当する代数をquantum double模型の物理量の代数にテンソル積により付け加えた後に、ゲージ固定を行うことで一般化Kitaev模型の物理量の代数を得る予定であった。しかしながら、この問題設定では物質場とゲージ場の両方を適切に設定する必要がある。まず、toric codeの場合の類推として、Majoranaフェルミオンやその一般化のパラフェルミオンを候補として想定していたが、これらの物質場から適切なゲージ場を設定することができなかった。そのため、一般化Kitaev模型の物理量の代数および状態空間の構成をより系統的に行う方法を探索することに方針を転換した。 そこで、Hoph代数の余積の構造に着目した。これはHoph代数からHoph代数のテンソル積への代数射である。toric codeの場合を考察したところ、実際に余積を用いることでtoric codeの状態空間からKitaev模型の状態空間への線形写像を構成できることがわかる。そこで、この描像を一般のquantum double模型へ拡張することで一般化Kitaev模型の状態空間が得られるという着想を得た。 上記のように、有効な方針を得たものの、当初の目的は達成できていないことが評価の理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究の結果、toric codeからKitaev模型を得る手続きをHopf代数の代数射として理解する方針を得たので、この描像を確立する。具体的には、Kitaev模型の状態空間の中で、toric codeの状態空間を上記の代数射の像として特徴付ける。これにより、一般のquantum double模型に対しても対応する一般化Kitaev模型の状態空間が構成される。さらに、一般化Kitaev模型のハミルトニアンを部分空間での有効ハミルトニアンがquantum double模型のものと一致するように構成する。次に、このように構成した一般化Kitaev模型のうちいくつかに着目し、量子スピン液体とtopological秩序の観点から解析を行う。topological秩序に関する解析として、まず一 般化Kitaev模型のハミルトニアンのスペクトルを計算し、スペクトルにギャップが現れるパラメータ領域を特定する。次に、スペクトルにギャップがあるパラメータ領域で、基底状態の縮退度と基底状態の部分空間に作用する代数を特定し、基底状態がtopological秩序を示すかを議論する。量子スピン液体に関する解析として、量子スピンの同時刻相関関数を基底状態において計算する。 さらに、topological秩序と関係が深い共形場理論とSchramm-Loewner発展(SLE)の関係を本年度に引き続き研究する。特に、スーパーWess--Zumino--Witten理論に対応したSLEや超共形代数に対応したSLEを構成し、これらの性質を研究する。 これらによって得た結果を国内及び国外の学会、研究会において報告し、近隣分野の研究者と議論を行う予定である。
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Research Products
(5 results)