2017 Fiscal Year Annual Research Report
野生ニシローランドゴリラの父性行動から探る学習の情報源としての父親
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17J09672
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田村 大也 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | ゴリラ / 父性 / 社会関係 / 霊長類学 / 人類進化 / ガボン共和国 |
Outline of Annual Research Achievements |
ニシローランドゴリラは基本的に単雄複雌群を形成し、群れ内に存在するシルバーバックと呼ばれる一頭の成熟オスがメスとの交尾を独占する。そのため、群れに在籍する未成熟個体は母親だけでなく、社会的に認知可能な父親(シルバーバック)を持つ。このような社会構造を形成する大型類人猿はゴリラ属のみである。ゴリラの父子間で見られる社会的関係を調査することは、人類社会を特徴づける性質の一つである「明確な父性の確立」の起源の解明に繋がる。 平成29年度はガボン共和国ムカラバードゥドゥ国立公園にて、8月~11月及び1月~4月までの合計6か月間の現地調査を行い、直接観察に基づいた行動データの収集を行った。調査地では研究チームが追跡してきた群れのシルバーバックの消失が起きた。それに伴い、残された群れのメスや未成熟個体の隣接3群への移籍が観察された。移籍先の群れの1つは、シルバーバックと2頭のオトナメス、またそれらのアカンボウ2頭で構成されていた。つまり、移籍後は群れ内にシルバーバックと血縁関係にあるアカンボウ2頭と血縁関係のない移籍してきたコドモ2頭が同時に在籍する状況となった。この状況を利用して、血縁の有無によるシルバーバックの各未成熟個体への交渉の違いを調査した。 その結果、まず、シルバーバックから非血縁の未成熟個体への激しい攻撃などの敵対的交渉は観察されず、群れ内での存在は許容されているようだった。また、シルバーバックから未成熟個体への積極的な交渉は、血縁・非血縁共に観察されなかった。一方で、血縁のある2頭は採食・休息・遊びなどの場面でシルバーバックに頻繁に近接していたが、非血縁の2頭は近接の頻度が著しく低かった。 以上のように、血縁の有無によりシルバーバックとの関係の相違が一部観察された。平成30年度も引き続き野外調査を実施し、より詳細なデータ収集を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度は予定より長期間の現地調査を実施することができ、様々な重要な観察を行うことができた。一方で、想定していなかった対象群のシルバーバックの消失が起きたことで、調査地におけるゴリラ集団の社会的変動が生じた。これにより、消失後の残党個体の移籍先や隣接3群の群れ構成の確認、新たな個体識別など、調査のベースとなる観察やデータ収集に多くの時間を費やした。それに伴い、対象群の選定やデータ収集法の確定が遅れ、十分な量的データを収集できなかった。しかし、今回観察されたゴリラ集団の社会的変動は、野外研究の蓄積の少ない野生ニシローランドゴリラにおいては大変貴重な事例であり、事例的ではあるが研究課題にも関連する重要な観察ができたことは大きな成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度も引き続き現地調査を行う。予定としては9月から3月頃までの約6か月間を予定している。平成29年度の調査で対象群は決定済みでデータ収集法もおおよそ確定できた。そのため、本年度の調査では、多くの時間を父子間関係に関するデータ収集に当てることができる。
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