2017 Fiscal Year Annual Research Report
The unique membrane formation and remarkable deformability in insect cell
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17J09775
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
塩見 晃史 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | スクランブラーゼ / ショウジョウバエ / 変形能 / マイクロピペット / マイクロ流路 / 形質膜 / リン脂質 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類細胞の形質膜では、リン脂質が外層と内層で非対称に分布しており、その非対称性が膜輸送や細胞分裂等の細胞機能にとって重要である。一方、ショウジョウバエ細胞では、リン脂質を二層間で混和するスクランブラーゼXKRが恒常的に活性化し、リン脂質が形質膜の外層と内層で対称的に分布していることを申請者は見出した。更に、ショウジョウバエ細胞は哺乳類細胞と比べて高い変形能を有しており、その高い変形能にXKRが関与していることも見出した。そこでXKRが細胞の変形能を向上させる分子メカニズムの解析を行った。 先ず、シリンダー型のマイクロピペットを細胞に接触後、一定の圧力で吸引し、その時の吸引圧と吸引された長さから細胞の膜張力とヤング率を算出した。その結果、哺乳類由来の培養細胞であるTHP-1細胞やCHO-K1細胞と比較してショウジョウバエ由来の培養細胞であるKc167細胞やS2細胞の膜張力とヤング率はどちらも非常に低いことが明らかになった。さらに、CRISPR/Cas9によりXkr遺伝子を欠損させたKc167細胞では、膜張力とヤング率が上昇しており、XKRを再発現させることでKc167細胞と同程度にまで回復した。 次に、高粘性流体が幅50 μmのマイクロ流路内を高速で通過した時に生じるずり応力により細胞全体を変形させ、その時の流速と細胞の変形度から細胞全体の変形能を評価した。その結果、Kc167細胞と比較してXKR欠損細胞はずり応力に対する変形能が低下していることが明らかになった。 さらに、ショウジョウバエ個体におけるXKRの機能を解析するため、GAL4-UASシステムを用いてショウジョウバエの血球細胞であるヘモサイト特異的にXKRの発現を抑制した個体を作製した結果、XKRの発現抑制によりヘモサイトの変形能が低下し、体内を循環するヘモサイトが減少することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究により、細胞局所並びに細胞全体の変形能の定量的な評価系の構築に成功し、ショウジョウバエ細胞が哺乳類細胞よりも非常に変形能が高く、その要因としてXKRが重要であることを明確にした。さらに、これらの評価系を構築したことで平成30年度に実施予定である変形時におけるリン脂質やタンパク質の局在変化や集積を評価することが可能となった。 また、ショウジョウバエ個体を用いた実験では、様々な観点から表現型を探索することで、XKRの発現抑制により体内を循環するヘモサイトが減少することを見出した。このことは、XKRによる変形能の向上が培養細胞だけの現象ではなく、生体内においても重要な役割を果たしていることを示している。 これらの研究成果について、第59回日本脂質生化学会及び第90回日本生化学会において発表した。以上から、本研究は順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
リン脂質可視化プローブ群や細胞骨格に関連するタンパク質のGFP融合体などを用いて、物理的に細胞を変形させた時の形質膜リン脂質や細胞骨格の挙動について解析を行う。 また、生体内におけるXKRの生物学的役割の解析を平成29年度に引き続き行う。
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Research Products
(3 results)