2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17J10155
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
笠原 由佳 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 海馬歯状回 / 発達 / マイクリグリア / シナプス |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、苔状線維が一方向性に投射する回路形成メカニズムを解明することを目的とし、研究を行ってきた。これまでに、苔状線維の特異的プレシナプスマーカーであるSynaptoporin (SPO) を用いた組織学的検討により、発達期の海馬歯状回において苔状線維が逆行性にも投射する可能性を発見している。より詳細に検討するため、神経細胞の一部がGFPでラベルされたThy1-mGFPマウスを用い、発達期における苔状線維の投射様式を直接的に観察した。この結果、顆粒細胞から伸長した苔状線維が分子層に逆行性投射し、他の顆粒細胞に投射することを明らかにした。 さらに、申請者は、脳内免疫細胞であるマイクログリアが発達期において逆行性に投射する苔状線維を貪食・除去することで一方向性の投射が形成・維持されるのではないかと考えた。この可能性について検証するため、SPOシグナルとマイクログリアの関係性について観察した結果、活性化型マイクログリアは発達初期において分子層に集積し、より活発に異所性の苔状線維プレシナプスを貪食することが示唆された。さらに、異所性SPOシグナルの消失におけるマイクログリアの必要性についてin vivo実験系を用いて検討した。マイクログリアの生存に関与するCSF1Rチロシンキナーゼ阻害薬であるPLX3397を発達初期のマウスに投与した結果、マイクログリアの密度が減少し、SPOシグナルが残存した。これらの結果から、発達初期における異所性の苔状線維プレシナプスの除去にはマイクログリアが必要であると示唆される。 本研究により、発達期において苔状線維が逆行性に投射し、この逆行性投射がマイクログリアにより貪食・除去されることで歯状回神経経路が精密化されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では胎生期マウスに対してウイルスインジェクションを行い、苔状線維を可視化する予定であったが、マウスの死亡率が高かったため中止した。代わりに神経細胞の一部にGFPを発現するThy1-mGFPマウスを用い、苔状線維の観察に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
Thy1-mGFPマウスでは、発達初期においてGFPを発現する顆粒細胞が少ないため、発達初期における苔状線維の投射様式を観察することが困難である。このため、今後は幼若期マウスにエレクトロポーレーションを行い、発達初期における苔状線維の可視化を試みる。
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Research Products
(5 results)