2018 Fiscal Year Annual Research Report
ニュートリノ質量分光へ向けたXe原子のコヒーレンス生成
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17J10235
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
今村 慧 岡山大学, 異分野基礎科学研究所 量子宇宙研究コア, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 原子・分子物理 / コヒーレンス / ニュートリノ質量分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究は,原子・分子間のコヒーレンスを利用したニュートリノ質量分光法開発の一環として行われている.この手法は,原子・分子過程の一つである光子随伴ニュートリノ対放出と呼ばれる稀過程を利用することで,ニュートリノの未知パラメータを決定することができると期待されている. 当該研究では気体Xe標的をこの質量分光法へ適用すべく,準安定状態である第一励起状態と基底状態間にコヒーレンス生成並びに高次QED過程の増幅を目的としている.当該年度はレーザーによる励起スキームの確立を主に行った.励起の確認には多光子共鳴イオン化法を用いた,イオン化の際に放出される電子を検出することで,磁気双極子,電気四重極子遷移などの高次の遷移を利用した,2光子励起による準安定状態への励起を確認した.さらに,励起用レーザーとは別にプローブレーザーを導入することで準安定状態へ遷移したXeの原子数の見積もりを可能にした.また,得られた実験結果と理論計算を比較すべく数値計算を行っている.数値計算には該当する過程を考慮した2準位還元ハミルトニアンを用いた光ブロッホ方程式で行った.計算に必要な遷移行列要素は報告例がないため,高次の遷移についての行列要計算については理論家と共同で進めている.数値計算と実験値との定量的な比較を行うことで,生成可能なコヒーレンス,増幅実験において想定されるシグナル量の見積もりが可能となる.これらの,結果をもとに今後増幅実験へと着手していく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当年度は昨年度開発を行ったレーザー光源を用いて励起実験を行った.Xeの第1励起状態は基底状態と角運動量が2異なり相対パリティが奇の準安定状態であるため,1光子での遷移が完全に禁制である.通常レーザー励起で用いられる電気双極子1光子での遷移が不可能であるため,この準位間をレーザーで直接励起することは容易ではなく先行研究での報告は見つかっていない. レーザーによる直接励起の確認は多光子共鳴イオン化法を利用し電子検出で行った.これは,準安定状態にレーザーで遷移したXeがさらに光子を1つ吸収することでイオン化されることを利用したものである.Xeがイオン化された際に放出される電子を,高電圧を印加した単一ワイヤーが作る電場で加速・増幅・検出することで準安定状態への励起を確認した.さらに,準安定状態へ励起されたXeの原子数を評価するためにプローブレーザーを導入し蛍光検出を行った.実験と並行して現在の励起数並びに生成コヒーレンスを評価するための数値計算を,光ブロッホ方程式を用いて行っている.観測された励起プロセスを用いた実験報告例がないことから,遷移強度などの数値計算に必要なパラメータについても報告例がなく理論家と共同で行っている.
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度まででレーザーを利用して準安定状態のXeを生成することに成功している.現在進行中である数値計算と実験で得られた励起数を定量的に比較することで,生成可能なコヒーレンス,増幅実験におけるシグナルの見積もりを今後第一に進めていく. 実験の面ではレーザー強度やXeガス圧など実験条件の最適化を行うことでコヒーレンス生成効率の最大化を行う.また,増幅実験での想定シグナル量にも依存するが,実験セットアップの変更など必要な改良を適宜行い,増幅実験に着手していく予定である.
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Research Products
(2 results)
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[Presentation] ニュートリノ質量分光に向けたXe原子の多光子励起2019
Author(s)
佐藤帯子, 増田孝彦, 今村慧, 岡井晃一, 平木貴宏, 原秀明, 宮本祐樹, 笹尾登, 田代基慶, 植竹智, 吉見彰洋, 吉村浩司, 吉村太彦
Organizer
日本物理学会 第74回年次大会
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