2017 Fiscal Year Annual Research Report
微生物群集バイオフィルムにおける遺伝子変異・水平伝播の動態解明
Project/Area Number |
17J10413
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中村 祐哉 東京工業大学, 生命理工学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | バイオフィルム / 微生物群集 / 遺伝子変異 / 遺伝子水平伝播 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、Nakamura et al., 2016における実験室環境において継続的に培養可能な微生物群集バイオフィルムサンプルを用いて連続培養し、時系列サンプリングを行う。獲得したサンプルからDNAを抽出し、次世代シーケンサーによる大量配列解読することで、バイオフィルムに含まれている微生物群集の遺伝子変異・水平伝播を検出、解析する。これによって、先行研究にて報告されていたバイオフィルムにおける遺伝子変異・水平伝播の促進の実態を観察し、その動態解明を目指す。 まず、本研究を進めるに当たっての基礎的検討を行うために、小スケールでの微生物群集バイオフィルムサンプルの連続培養、及び時系列サンプルのシーケンシングを行った。 微生物群集バイオフィルムサンプルを滅菌済みのナイロンビーズをいれた1/3の濃度の液体LB培地で、48時間、28℃、静置培養の条件で培養した。培養後、バイオフィルムが表面に形成したナイロンビーズを新たな滅菌済みのナイロンビーズをいれた1/3の濃度の液体LB培地に移動し、同条件での培養を繰り返した。バイオフィルムの継代は15回行われ、そのうち1、3、10、15回目に培地に含まれる微生物群集の菌体を採取した。 また、微生物群集における遺伝子変異・水平伝播をバイオフィルム状態と浮遊状態で比較解析するために浮遊状態での連続培養も行い、バイオフィルムと同様に継代は15回行われ、そのうち1、3、10、15回目に培地に含まれる微生物群集の菌体を採取した。 これにより獲得した各時系列における微生物群集の菌体から、全ゲノムDNAを抽出し、illumina社MiSeqにより配列解読を行った。得られた配列データから高精度な配列のみを抽出後、サンプルごとにアセンブルを行い、ゲノムを再構築した。更に、これらのデータを用い、遺伝子変異・水平伝播の検出の手法の検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の年次計画では、期間中に、「① 実験室環境において継続的に培養可能な微生物群集バイオフィルムサンプルから優占種を単離培養、ゲノムを再構築」、「② Beads Transfer法によるバイオフィルムの長期培養」の2項目を遂行する予定であった。①について、バイオフィルム群集の多様性がそれほど大きくないことに着眼し、単離培養を経ずにゲノムを再構築可能ではないかと考え、小スケールでの微生物群集バイオフィルムサンプルの連続培養、及び時系列サンプルのシーケンシングを行った。これにより獲得した配列データから、ゲノムの再構築を進めた。②については、小スケールでの連続培養を行ったことで、より長期の培養については次年度へ繰越しとなったが、実験条件などの知識の蓄積や2年目に行う予定であった「遺伝子変異・水平伝播の解析」の手法の検討を昨年度に行うことが出来ているため、実質的な遅れはないと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、昨年度までに検討した遺伝子変異・水平伝播の検出手法を用いて、実解析を実施する。各細菌の遺伝子ごとに時系列による遺伝子変異の蓄積を追跡し、バイオフィルムと浮遊細胞における遺伝子変異の頻度差を算出する。これにより、変異頻度の大きい遺伝子の同定も行う。また、再構築したゲノムにおける遺伝子の存在位置を時系列で比較し、水平伝播の起こった遺伝子を同定する。ここまでの成果を、学会報告、または論文報告する予定である。 更に、昨年度の小スケールでの実験から得られた知見を活用し、連続培養期間を延長、時系列サンプル数も増加させて再度同様の実験を実施する。これにより、小スケールでは確認できなかった存在量の小さい細菌種や、その遺伝子についても同様に解析し、微生物群集バイオフィルムにおける遺伝子変異・水平伝播の実態をより詳細に明らかにしていく予定である。
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