2018 Fiscal Year Annual Research Report
15世紀ブルゴーニュ公国における美術とパトロネージの研究
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17J10459
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 龍一郎 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | ジャン・ル・タヴェルニエ / ミニアチュール / フィリップ善良公 / 蔵書目録 / 紙と羊皮紙 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、『シャルルマーニュの年代記と征服記』(ベルギー王立図書館、ms.9066)とその彩飾挿絵作者ジャン・ル・タヴェルニエによる献呈図(fol.11.)の考察を出発点に、1) タヴェルニエに帰される諸作例の比較、2) フィリップ善良公らの蔵書の特徴の検討が中心となった。 1)では前年度の課題を引き継ぎ、タヴェルニエ作とされてきた作例を技法面から再検討し、幾つかの作例がタヴェルニエではないと結論付け、一方でタヴェルニエの作品が後代の画家に広く受容された傍証を得た。その結果、前年度の成果であるms.9066の献呈図と共通するモチーフを含む作例の考察が進展し、都市景を強調する理由の解明には至らなかったが、ms.9066の都市は必ずしも特定の都市を意味せず、当時の流行を反映しながらも後代に数多く模倣され、ときに実景とも関連した最初期のモチーフである可能性が示唆された。以上は学会・研究会で発表され、そこでの議論等をもとに新たな課題や在外調査の対象(フランス国立図書館、ms.fr.9198, NAL3225、他)の選定を進めた。年度末の在外調査では、写本の実見調査を進め、上記の学会発表等の見解を補うデータを得た。昨年度からの課題のうち、作者同定や技法の分析が時間を要したため、今年度は上記の基礎作業に注力した。 2)は、1)の作者同定の過程で彩飾挿絵の技法毎に支持体である羊皮紙とそれより安価な紙が使い分けられている点に着目して得られた視座である。紙製写本の受容をフィリップ善良公の蔵書目録を中心にジャンル毎に検討し、年代記を中心に紙製写本の割合が高いというデータが得られた。これは、タヴェルニエによる紙製写本の彩飾挿絵と比較しながら、羊皮紙製の年代記であるms.9066の制作目的を推定する手掛かりとなる。在外調査でも現地の研究者との議論を通じて紙製写本の役割に関する有益な見解を得られた。
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Research Progress Status |
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(3 results)