2018 Fiscal Year Annual Research Report
身体制御から高次認知までを繋ぐ知能発達の構成的研究
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17J10512
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
青木 達哉 電気通信大学, 情報理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 知能モデル / 発達 / 知能ロボット / マルチモーダル情報統合 / 時系列情報処理 / 概念獲得 / 深層学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は人の知能発達過程を 自己の身体と周囲の環境の相互関係を基盤とし,逐次的にそれらに対する理解が変容する過程と考え,この仮説に基づいた知能モデルの構築とロボットを用いた再現実験の実施を通して人の知能発達過程に対し 新たな知見を得ることを目指すものである. 第2年度の研究では,知能発達モデルが時系列情報に対応するため手法の拡張と提案モデルを搭載した実ロボットでの実験の実施を進めた.人の感覚器は連続な値で表現される時系列情報を観測していると考えられ,時系列情報を扱えるように計算モデルを拡張することは人に近い学習状況での再現実験を行うために重要性が高い.実際のモデルは昨年度のマルチモーダル情報に対応した生成モデルと,時系列情報を扱いに長けたモノモーダル情報の生成モデルを階層的に組み合わせた生成モデルで実現を考えた.この方法によりマルチモーダル情報の統合と高次元センサ情報の時系列情報に対する内部表現の獲得を同時に行うモデルになる期待できる.このモデルについては,センサ情報から潜在変数を介してセンサ情報を復元できることを確認した.しかし,推定対象のモダリティ情報に対し観測情報では曖昧性が残る場合には推定結果が特定の情報に偏る問題生じることが確認され,提案モデルには課題もあることが判明した. また,実ロボットの実験として,ロボットが重さと見た目が異なる複種類の物体を操作し, 操作中の一人称視点画像,ロボット自身の腕の関節角,手首の力覚情報を連続的に取得し,それらの情報間の関係の学習実験を行った.学習後のモデルを確認すると,下位層では時系列情報の変化パターンに応じた内部表現が獲得された.一方,上位層では物体カテゴリ表現のような内部表現が現れると予測してたが,明確にそのようなものは見られらなかった.上位層の内部表現については今後詳細な分析を行っていく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の研究の進捗状況について振り返ると,発達過程の再現実験でロボットに搭載する計算モデルの構築については本研究が想定する学習状況に対応できるように順次必要な拡張が進められ,昨年度行うことができなかった実ロボットを用いた情報の収集と学習の実施を行うことができ,一定の進捗はあった. その一方で,実験フレームワークの制約の影響もあり,発達過程における計算モデルにおける内部状態の変化に対する解析が実施できていない.そのため,再現実験を通した発達過程そのものダイナミクスについての検証はあまり進んでいない.また,本研究では提案する統合モデルの獲得した性能を人の知能レベルと比較できる形式で評価することも課題としているが,これまでの評価は一般的な機械学習の手法に適応される基準に基づいたものにとどまっており,人との知能レベルの比較の方法についても検討段階である. 以上の状況を踏まえ,現在までの研究活動の進捗状況を「 (3)やや遅れている 」と評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに知能発達を再現するために構築した知能発達モデルが複数感覚の時系列情報を統合し,相互推論を可能とする学習モデルであるかの検証を進めてきた.今後は本研究課題の主目的である発達過程のダイナミクスの解明を進めるために,提案モデルを搭載するロボットを用いた知能発達実験を逐次的な学習条件で実施する.これは,昨年度までの実験は経験の収集と蓄積した経験をを用いた学習が独立な段階であり,知能発達モデルの内部状態の連続的な変化を調べることが難しい条件になってしまっていたことを解消するために行うものである. そのための具体的な手法の変更として,これまでの本研究の実験フレームワークにはなかった,知能発達モデルの状況が逐次反映され,ロボットが行動を決定する仕組みを新たに導入する.この行動生成の仕組みは強化学習における好奇心に基づく探索行動に関する研究を参考し実現する.上記のように研究を進めることで,より再現実験の環境を人のものに近づけ,モデルの変容を分析することで知能発達現象における自己の身体と周囲の環境の相互的な作用を明らかにすることを目指す. 加えて,本研究のもう1つの目的である再現実験によって獲得された計算モデルの知能レベルと人,特に同様の段階であると想定している幼児の知能レベルとを適切に比較する方法の提案についても並行して進めていく.
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Research Products
(1 results)