2018 Fiscal Year Annual Research Report
二光子顕微鏡多次元画像における血管および細胞の定量解析に関する研究
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17J10551
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
須貸 拓馬 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 生体医工学 / 動物実験 / 光工学 / ミクロ観察 / ボリューム画像解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】 認知症や精神疾患による脳疾患はそれらに密接に関わる神経細胞の周囲の血流低下が観察されることから,神経の機能不全や低下によるものと考えられている.しかし神経と血管およびグリア細胞間の関係性については未解明な点が多い.そこで本研究では認知症や精神疾患などを含めた脳血管障害において,神経,グリア細胞,血管をミクロ領域で生きたまま同時観察可能な二光子レーザー顕微鏡法(二光子顕微鏡)で観察し,これら病態の発症に関わる脳微小領域での血流低下と細胞環境や神経機能の変化との因果関係を明らかにすることを目的とした. 【内容】 脳の活動はダイナミックに変化するため,脳の活動に伴う脳血管の応答において,個々の神経活動と血管運動とを同時に計測することは両者の定量的関係性を理解する上で重要である.そこで本年度も引き続きマウス大脳皮質3次元空間における神経細胞と血管反応との定量的関係性について検討した.また脳血管の可塑性に伴う周辺グリアとの相互作用を明らかにするため,慢性低酸素下における血管新生時のミクログリアの挙動に着目し,血管形状および細胞運動の評価と薬理実験を実施した. 【成果】 機能的な神経活動に対する微小血管の応答は約86%の毛細血管部位では変化がみられず,残り14%の毛細血管部位が拡張収縮することが明らかとなった.本成果は二光子顕微鏡画像の大規模解析によってはじめて定量的に特徴付けることが可能となり,これにより毛細血管血液量の変化をより高精度に推定することが可能となった.その結果,従来の脳活動イメージングの信号源が動脈血液量の増加によるものであるという知見を強く支持する結果となった.さらに,本研究により毛細血管の動脈性・静脈性による極性の違いがあまり問題ではないことが分かった.すなわち,健常時の脳活動に対する脳血流の反応性を決定する因子は,細動脈の反応性であることを強く示唆する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
体調を崩すことが多く,計画通りの進捗は望めなかったと考える.医師との相談の上,休養を取ることが度々あったが,自宅での作業環境がもう少し整っていればと感じることもあった. また,今年度はコンピュータで解析不可能な領域を人の目で確認しつつ計測できる解析支援グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)の開発も行っていたので,当初の計画とは遅れていると考える.しかし,このGUIによりMATLABプログラミングが不得意な人でも容易に今までの計測ができると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
機能的な刺激に対する脳微小血管の反応性については,細動脈の機能が重要であることが示唆された.しかし,脳実質を隙間なく連絡する毛細血管が何も機能的な役割をしていないとは言い切れない.したがって,健常時の毛細血管密度そのものが果たす機能を調べる必要がある.このことは,加齢によって毛細血管密度が減少することで脳血流の低下,しいては脳機能の低下につながるという因果関係を説明するうえでも重要な検討課題である.一方で,減り続ける毛細血管をどのようにして回復させるのかという点について,脳卒中や神経編成疾患に対する細胞治療,あるいは神経血管ユニットの再構築の実現の観点からも重要である.本年度はミクログリアが新生毛細血管の接続において重要であることを見出したが,そもそも血管新生のトリガーとなる因子については未解決である.次年度以降,血管周皮細胞や内皮細胞自体のフェノタイプの変化に着目した研究を展開する.
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Research Products
(7 results)