2017 Fiscal Year Annual Research Report
脊索動物の卵成熟・排卵機構の起源は、神経ペプチドによる制御か?
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17J10624
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Research Institution | Suntory Foundation for Life Sciences |
Principal Investigator |
松原 伸 公益財団法人サントリー生命科学財団, 生物有機科学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 神経ペプチド / 卵成熟 / 排卵 / カタユウレイボヤ / MAPKシグナリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、脊索動物の原型を有していると考えられるカタユウレイボヤを用いて、「神経ペプチドによる卵成熟・排卵制御ネットワークを解明することである。平成29年度は計画に従い、in vitro評価系を用いた実験によって、ホヤ卵成熟と排卵の両方を促進させる神経ペプチドの同定に成功した。 このペプチドの下流ではMAPKシグナリングが働くことが示唆されたので、ペプチド処理後1時間までの各点で濾胞を回収し、抗リン酸化ERK抗体を用いた免疫染色を行ったところ、ペプチド処理後5-10分でERKのリン酸化レベルが上昇することがわかった。MEK/ERKの阻害剤でホヤ卵胞を処理すると卵成熟率も排卵率も減少することがわかっているため、ペプチドの下流でMEK/ERKが卵成熟と排卵の両方を制御することが示唆された。 ERK下流の卵成熟制御機構については、MPF活性測定のためのp13suc1ビーズを用いたホヤMPFの濃縮系と、ELISAによる活性の検出系を確立できた。平成30年度にはこれらの系を用いてペプチドとMPF活性の関係を明らかにする。 ERK下流の排卵制御機構については、メタロプロテアーゼ阻害剤処理がホヤ排卵を抑制することがわかっていたので、MEK阻害時(排卵抑制時)に発現が抑制された遺伝子を調べた。その結果、1つのマトリクスメタロプロテアーゼ (MMP) 遺伝子の発現が減少しており、これをホヤ排卵実行酵素の候補とした。このMMP阻害剤を排卵直前のホヤ濾胞に処理したところ、排卵率が大幅に減少した。以上の結果から、神経ペプチド→MEK/ERK→MMPというホヤ排卵制御系の骨子が明らかになってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究計画に従い、ホヤ卵成熟と排卵を促進させる神経ペプチドを同定し、その下流ではMEK/ERKシグナリングやMMPが働くことを明らかにした。概ね期待した結果が得られたので(2)の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はまず、29年度に確立したMPFの濃縮系とELISAによる活性測定系を用いて、卵成熟を促進させるペプチド処理によるMPF活性の上昇を検出するとともに、MPF構成因子の特異的な阻害剤を用いて卵成熟に対する影響を調べる。また、in situ hybridizationや免疫染色によって卵成熟・排卵の各制御因子の卵胞内局在を決定する。さらに排卵制御機構についてはペプチドによるMMP遺伝子発現制御やMMPの基質同定に向けた実験に着手することで、神経ペプチドが制御する卵成熟・排卵制御カスケードを明らかにしていく。
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