2017 Fiscal Year Annual Research Report
Insight-like learning in rats
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17J10634
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
牧野 健一 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 洞察学習 / ひらめき / 学習 / 個体差 / 前帯状皮質 |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちは試行錯誤学習と洞察学習という2種類の学習様式を有している。試行錯誤学習は、漸進的な学習であり、試行を繰り返すことで少しずつ達成されていく学習である (Thorndike, 1898)。一方で、洞察学習は、瞬間的な学習であり、一般に「ひらめき」と呼ばれているものである (Kohler, 1925)。本研究では、この洞察学習に着目し、未だ明らかとされていない「洞察学習の発生メカニズム」の解明を最終的な目的として研究を行っている。 本研究では、ラットのひらめき様の学習である「洞察様学習」を観測可能であるノーズポーク試験系を新規にデザインした。この行動試験系は、洞察様学習だけでなく、試行錯誤学習を観測することもできるため、これら2種類の学習様式の、同一の試験系による直接比較を可能としている。これを用いて、洞察様学習の発揮を担う脳領域の同定を試みた。はじめに、候補脳領域として、学習に重要である脳領域の1つである前帯状皮質 (ACC) に着目した。それぞれの学習様式に対するACCの活動の必要性を検討するため、ACCの不活性化実験を行った。GABAA受容体作動薬であるムシモールを局所的に投与することで、ACCを特異的に不活性化し、ノーズポーク試験を行わせた。その結果、ACCの不活性化により、ラットの学習成立に遅延が発生した。さらに、学習様式ごとに解析を行った結果、洞察様学習を示した個体の割合は、ACCの不活性化により、減少することはなかったものの、その一方で、試行錯誤学習を示した個体の割合の選択的な減少が認められた。したがって、ACCは洞察様学習よりも、むしろ試行錯誤学習の発揮に重要な脳領域であることが明らかとなった。これらの結果から、洞察様学習および試行錯誤学習の発揮がそれぞれ異なる脳領域において担われている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラットのひらめき様の学習である「洞察様学習」を観測可能であるノーズポーク試験系を新規に構築することに成功した。この行動試験系は、洞察様学習だけでなく、試行錯誤学習を観測することも可能である。したがって、これら2種類の学習様式の、同一の試験系による直接比較を初めて可能とした画期的な系である。さらに、ACCの不活性化実験により、洞察様学習および試行錯誤学習の発揮がそれぞれ異なる脳内システムにより担われている可能性が支持された点においても意義深い。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、ムシモールによる不活性化実験の系を用いることで、高次機能の中枢である前頭前皮質における脳領域を中心に、具体的には、前辺縁皮質や眼窩前頭皮質を主要な候補部位として、洞察様学習の発揮に必要となる脳領域の同定を行っていく予定である。
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Research Products
(8 results)