2018 Fiscal Year Annual Research Report
動学的マッチング市場に対するメカニズム・デザインアプローチ
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17J10639
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
丸谷 恭平 京都大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | マッチング理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
マッチング理論とは、男性と女性、企業と労働者、学校と学生といった2つのタイプに分類されるグループに対して、人と人、あるいは人と勤務先や学校の組み合わせを考える枠組みである。どのような組み合わせが望ましいかといった経済厚生に関する考察のほか、組み合わせを決定する過程で生じる戦略的状況の分析を行っている。本研究は、これまで静的環境を分析の中心としてきた当該分野の既存研究とは一線を画し、動的なマッチング問題における、経済厚生の再定義とインセンティブ構造の解明を目的としている。 動学的構造を有するマッチング市場の代表的事例として、日本の就活市場やアメリカのPhDプログラム出願などを想定し研究を行った。これらの市場では企業・大学ごとに異なる募集期間を設けて選考を行っており、例えば就活市場では、まず外資系企業が選考を開始し、その後国内企業が春採用・秋採用と顔ぶれを変えながら登場する。動的マッチング問題を扱った既存の文献とは異なり、企業・労働者に戦略的な行動選択の幅の大きいこれらの市場では、インセンティブ構造は大変に複雑であることが考えられる。 当初の「研究の目的」である、動的マッチング市場における各プレイヤーの戦略的行動の分析を行うため、採用1年度目の研究では「研究実施計画」のとおり、動的マッチング問題の定式化に取り組んだ。さらに、2年度目には動的マッチング問題における経済主体のインセンティブ構造と、均衡で導かれる帰結のもつ性質とを明らかにした。3年度にあたる今年度は、これらの研究成果を論文にまとめ、学術会議での発表と、学術誌への投稿・掲載を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動的なマッチング問題において、そのインセンティブ構造と経済厚生に関わる研究は、先行する研究成果に乏しく、理論の基礎から作り上げていく必要がある。 また、動的問題におけるインセンティブは複雑であり、この問題解決には焦点を絞った考察を積み重ねていくことが合理的である。このような状況にあるため、1年目で動的マッチング市場の定式化に取り組んだことは、積極的に評価できる。研究成果は具体的な論文として結実してはいないものの、目標に向かって着実に前進しているだろう。 また、本研究課題の基礎ともいえる静的マッチング問題におけるインセンティブ構造の解明が進み、成果となる論文が国際学術誌に採択されたことも、本研究の重要な進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
動的マッチング問題における経済主体のインセンティブ構造と、均衡で導かれる帰結のもつ性質とを明らかにした。今年度はこれらの研究成果を論文にまとめ、学術会議での発表と、学術誌への投稿・掲載を目指す。
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Research Products
(3 results)