2018 Fiscal Year Annual Research Report
Understanding metabolic regulatory mechanisms of dormant cells in biofilms based on multi-omics analysis
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17J10663
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
千原 康太郎 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 休止細菌 / 緑膿菌 / バイオフィルム / トランスオミクス / RNA-タンパク質相互作用 / Hfq / small non-coding RNA |
Outline of Annual Research Achievements |
バイオフィルム関連感染症難治化の要因の一つとして休止細菌の存在が挙げられる。本研究では緑膿菌バイオフィルム中の休止細菌代謝制御機構の理解を目的とし、バイオフィルム中の休止細菌の分取およびプロテオミクス解析を実施した。緑膿菌コロニーバイオフィルムから、GFP蛍光希釈法による休止細菌の局在観察および抗菌薬感受性試験を実施した。さらに、GFP蛍光をもとにフローサイトメトリーで休止細菌および分裂細菌を分取し、LC-MS/MSによるタンパク質の網羅的同定を実施したところ、休止細菌では鉄の獲得に寄与するBacterioferritinや酸化還元恒常性維持に関与するThioredoxinが高発現していることが明らかとなった。 またRNA-タンパク質相互作用を包括的に理解するために、緑膿菌のRNA結合タンパク質Hfqを対象としたCrosslinking Immunoprecipitation followed by high-throughput sequencing (CLIP-seq) を実施した。本手法ではUVクロスリンク処理でin vivoのHfq-RNA間を共有結合させ、免疫沈降法によりHfq-RNA複合体のみを回収している。さらにRNAトリミング処理を施すことで、1塩基レベルでのHfq結合サイトの同定が可能である。緑膿菌Hfqに対するCLIP-seqにより、トランスクリプトーム上に約1,000箇所のHfq結合サイトを発見した。結合サイトに共通する配列を解析した結果、5’非翻訳領域上にAAN配列を、3’非翻訳領域上にGCステムループならびにU連続配列を検出した。HfqがAAN配列に結合する可能性はin vitroの系によっても示唆されていたことから、本研究によりHfqの結合配列は確定的となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
緑膿菌コロニーバイオフィルム中の休止細菌と増殖細菌に対するプロテオーム解析により、増殖細菌と比較して休止細菌で2倍以上発現しているタンパク質が約130個検出された。さらに休止細菌でのみ発現するタンパク質が約30個検出された。中でも、鉄の獲得に寄与するBacterioferritinや酸化還元恒常性維持に関与するThioredoxinが高発現していることが明らかとなった。一方で、バイオフィルムからのRNA回収率が低く、当初の予定にある休止細菌と増殖細菌間のRNA-seqの実施に至っていない。今後、効率的なRNA回収のために、RNA抽出方法の検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
フローサイトメトリーによるバイオフィルム中の休止細菌と増殖細菌の回収量を増やすことで、RNAの回収率を改善する。一方で、RNA回収方法に関してAGPC(acid guanidinium thiocyanate-phenol-chloroform extraction)法の利用などを検討する。回収率の改善後、抽出したRNAからcDNAライブラリを作製し、RNA-seqを実施する。最終的に、プロテオームデータとRNA-seqデータを統合するために、BioCycパスウェイツールのRegulatory Overviewを用いて、バイオフィルム中の休止細菌形成の原因遺伝子発現を調節するマスターレギュレーターを特定する。 CLIP-seqの結果から約100個程度の未同定sRNAsがHfqに結合することが判明している。特にバイオフィルム環境でHfqと強く結合しているsRNAsに着目し、Rapid Amplification of cDNA Ends反応によってその正確な長さを決定し、ゲルシフトアッセイによって実際にHfqと結合していることを確かめる。またsRNAsのターゲットを予測するためにsRNA欠損株と野生株間のRNA-seq解析を実施する。in vivoでその制御を評価するために、ターゲットとなるRNAの開始コドン下流にsuper-folder GFPを組み込んだ翻訳融合株を構築し、GFP蛍光をもとに新規Hfq結合sRNAの制御機構を確認する。
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