2019 Fiscal Year Annual Research Report
能の詞章の文字化に伴う作品・作者概念の成立の研究―世阿弥自筆能本の文字表記から
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17J10740
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 嘉惟 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 謡本 / 書誌学 / 観世元忠(宗節) / 観世元頼 / 早歌(宴曲) / 表記 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は基礎的な分類作業に終始してしまい、最終的な研究結果の公表には至らなかった。しかし、聊か得られた新見の2020年度中の公表を目指すものである。 (一)室町時代後期観世流謡本 観世元頼章句本(元頼本)と観世元忠(宗節)章句本の書誌情報の集成・分類を行った。詞章の筆跡についての分類作業を行う中で、元頼本全体の題簽および『生贄』詞章本文の筆者が戦国期聖護院門跡の道増(1508~1571)であることを明らかにした。道増は足利義輝(1536~1565)の近臣としても知られており、義輝周辺で元頼本が成立した可能性を示唆するものと考える。他の筆跡の同定作業は今後の課題となってしまったが、今回の成果については研究報告を行う予定である。 (二)早歌・能をめぐる書誌・表記 音楽的な影響関係を従来から指摘されている早歌と能だが、現存する室町期写本の装訂や表記については差異がある。装訂については、列帖装(あるいは綴葉装)が大半の早歌譜本に対し、謡本はとくに観世元頼章句本を中心に袋綴も多いことが知られていた。今年度の研究において、あらためて漢字・平仮名を交える表記の場合、早歌の譜本の方が漢字の使用率が高いことを確認できた。その過程で、早歌集『真曲抄』の室町時代後期書写とみられる新出断簡を見出した。『御成敗式目註』(国文学研究資料館所蔵)の紙背として現存するものだが、平仮名の使用率が高く、かつ原装訂は袋綴であったことから、室町期謡本との系譜的関係を想定可能が、実証するには至っていない。当該の新出資料の紹介と、それの分析については研究報告を行う予定である。 (三)注釈書研究の基礎 研究計画を変更し、近世の謡曲研究の端緒となったと評価される『謡抄』についての基礎的研究のための本文整理作業を行った。とくに字注や読み癖の注と、歌学との関係について改めて分析を加えた上で、成果の公表を目指したい。
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Research Progress Status |
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(1 results)