2018 Fiscal Year Annual Research Report
ALS発症機構としてのSOD1によるERAD複合体の機能変化メカニズムの解明
Project/Area Number |
17J10767
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林 裕輝 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | UBXD8 / ERAD複合体のストイキオメトリー / モデル基質 / オートファジー/リソソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
1) 変異型SOD1は、ERAD複合体におけるDerlin-1とUBXD8のストイキオメトリーを変動させる ALS関連変異型のSOD1が、Derlin-1を含むERAD複合体のストイキオメトリーを変動させうるか否かを、共免疫沈降実験を用いて検討した。その結果、ヒト胎児腎細胞HEK293Aにおいては変異型SOD1を過剰発現させるとDerlin-1と別のERAD構成因子UBXD8との相互作用が阻害された一方、マウス運動神経様NSC34細胞においては、Derlin-1-UBXD8結合が増強した。細胞種間で結合減弱か、増強かは異なるものの、HEK293AとNSC34という2種類の細胞いずれにおいても、変異型SOD1はDerlin-1とUBXD8との結合強度に変化をもたらすことが明らかとなった。
2) オートファジー/リソソーム系で分解されるER局在不良タンパク質モデルの作成に成功した 先行研究において、NSC34細胞に過剰発現された変異型SOD1はERADモデル基質NHKの分解を遅延することが報告されている。NSC34細胞においてNHKの分解経路を検討したところ、ユビキチンプロテアソーム系依存的なERADだけでなく、オートファジー/リソソーム系によっても分解されうることを見出した。従って、変異型SOD1はERADだけでなくER局在不良タンパク質のオートファジー/リソソーム系を介した分解をも阻害することが期待される。この仮説を検証するために、ERに局在し、かつ専らオートファジー/リソソーム系によって分解されるようなモデル不良タンパク質の作成を試みた。すると、10種類程度作成したうち1つの基質についてリソソーム阻害剤の添加により分解がほぼ完全に阻害されることが明らかとなり、専らオートファジー/リソソーム系によって分解されるモデル基質の作成に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
変異型SOD1は、ERAD複合体における構成因子のストイキオメトリーを変動させることでERADを阻害するという仮説のもと、実際に共免疫沈降実験を用いて複数の細胞腫でストイキオメトリーの変動を再現よく観察することができた。このストイキオメトリーの変動が実際にERAD阻害の主原因となっているか否かは未だ検討中であるが、来年度中には検討が終了する見通しが立っている。 一方で、変異型SOD1によって分解が遅延するようなER局在不良タンパク質がオートファジー/リソソーム系においても分解されうるという新しい知見を見出した。さらに、変異型SOD1がユビキチンプロテアソーム 系に依存するERADだけでなく、オートファジー/リソソーム系を介したER局在不良タンパク質の分解をも阻害しうるか否か検討するために行った人工モデル基質の作成にも成功した。このモデル基質は、変異型SOD1がER局在不良タンパク質のオートファジー/リソソーム系を介した分解を阻害しうるか否かを検討するために有用であるうえ、ER局在不良タンパク質のオートファジーという詳細な分子機構が未知の現象へとアプローチすることのできる強力なツールであると言える。 このように、当初の変異型SOD1依存的なERAD阻害メカニズムの解明にとどまらず、新しい知見をも見出せうるツールの作成に成功しているため、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
1) ERAD複合体におけるDerlin-1とUBXD8のストイキオメトリーの変動が変異型SOD1によるALS発症の原因となるか否かの検証 これまでに明らかにした変異型SOD1依存的なDerlin-1とUBXD8のストイキオメトリーの変動が、実際にERAD阻害やALS発症の原因となっているか否か検証するために、まずはUBXD8の過剰発現や発現抑制によりDerlin-1複合体におけるUBXD8の量を変化させたときにERADが阻害されるか否かを検討する。さらに、Derlin-1分子上のUBXD8結合領域を探索し、UBXD8と結合できないもしくは結合増強するDerlin-1の変異体を作成し、この変異体がERADを阻害するか否かも検討する。これらの後、変異型SOD1を発現するALSモデルマウスにおいてもDerlin-1とUBXD8のストイキオメトリーの変動が見られるか否か検討していく予定である。 2) 変異型SOD1がER局在不良タンパク質のオートファジー/リソソーム分解を阻害しうるか否かの検証 今年度作成したER局在不良タンパク質モデルを利用し、変異型SOD1を過剰発現した際にこのモデル基質のオートファジー/リソソーム系を介した分解が遅延するか否かを検討予定である。 3) ER局在不良タンパク質のオートファジー分解機構の検討 ER局在不良タンパク質がオートファジー/リソソーム系によって分解されうることは過去に論文として数件報告されているが、その詳細なメカニズムは不明である。そこで派生課題として、今年度作成したモデル基質を用いて、ER局在不良タンパク質がどのようにしてオートファジー/リソソーム系へとターゲティングされうるのかを検討予定である。
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