2017 Fiscal Year Annual Research Report
イタリアにおける震災復興都市計画手法と地域協働体制に関する研究
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17J10930
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
益子 智之 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 震災復興都市計画 / ガバナンス形態 / 中心市街地再生 / 復興プロセス / シナリオデザイン手法 / イタリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、イタリア震災復興における都市・地域の計画・運営の方法について、被災市街地の再生戦略・計画と復興を運営するガバナンス形態の二つの側面から調査・分析した上で、復興プロセスを評価する理論的方法を確立し、将来の都市・地域像に向けた複線的シナリオの想定と図化を行う復興シナリオデザイン手法の解明及び計画情報システムの構築を目的としている。 平成29年度は、「研究対象都市の抽出と復興プロセスデータベースの構築」を行うことを目的として調査、研究を行なった。これまでの研究の中で調査を行えていなかった1976年フリウリ地震被災4都市(ヴェンゾーナ市、ジェモナ市、オゾッポ市、ボルダーノ市)と1997年ウンブリア地震被災4都市(ノチェラ・ウンブラ市、フォリーニョ市、ペルージャ市、グッビオ市)を対象に現地視察を実施した。その後、最も特徴的な被災と復興を経験した2都市ヴェンゾーナ市とノチェラ・ウンブラ市を対象とし、復興に向けた戦略・計画及びガバナンス形態について市行政担当者へのインタビュー調査を実施した。このインタビュー調査により、対象とするフリウリ地震被災4都市は、それぞれ特徴的な被災市街地の改造と保全の関係を有しているという仮説を立てることができた。一方で、ウンブリア地震被災4都市では、復興計画を策定せず事業の優先順位を定める復興プログラムのみ策定していることが把握できたため、復興戦略・計画という観点から差異は見られないことが明らかになった。そのため、今後の調査では、ウンブリア地震の研究対象都市を、現在までに調査を実施したノチェラ・ウンブラ市のみとし、その他3都市は対象から除外することとする。また、インタビュー調査に際し、行政資料(暫定居住地計画、復興戦略・計画、復興事業計画など)を複写し、Illustrator CC 2018上で重ね合わせ、データベース構築に向けた作業を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度に実施した1976年フリウリ地震被災地と1997年ウンブリア地震被災地での現地インタビュー調査結果及びこれまでの研究によって、本研究課題の研究対象都市を4つの異なる地震災害により被災した計10都市と定めることができている。 また、研究対象都市の抽出と並行して、2012年イタリア北部地震被災4都市における、「計画策定・事業実施期における市民参加プログラムの実態及び評価」に関する調査・分析を行った。これまで調査研究を実施してきた4都市を対象とし、2つの分析軸、1)参加プロセスの5段階、2)コミュニティ参加レベルの4段階、による分析枠組みを設定し、各々の市民参加プロセスを評価した。その結果、3都市は、短期的で不連続な参加アクションを経ている一方で、ノビディモデナ市は、長期にわたり連続する参加アクションを経ていることが明らかになり、参加プログラムで議論した公共空間整備事業を実現させ、それらの管理・運営を市民グループで実施している実態が明らかになった。この研究成果は、共同研究者と研究協力者との国際共同研究論文として国際都市計画史学会にて発表を予定している。 以上のことから、当研究課題の研究対象都市を決定し、2012年イタリア北部地震の対象4都市における住民参加プロセスの実態を明らかにできたことから、平成29年度の研究実施状況は、イタリアでの共同研究者及び研究協力者との協働により、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度には、1976年フリウリ地震被災4都市の復興計画及び復興事業計画など行政資料を入手することで、研究対象とする10都市の一次資料を全て入手し、さらに適宜復興プロセスデータベース構築に向けた作業を継続する。 研究対象都市の市行政へのヒアリング調査及び資料入手後、各研究対象都市における復興計画手法とガバナンス形態の類型化を検討する。特に、現在も復興期にある2009年アブルッゾ地震被災地ラクイラ市、2012年エミリアロマーニャ地震被災4都市については、復興プロセスに関与している地域の多様な構成員へのインタビュー調査を実施し、ソーシャル・キャピタルの変容プロセスを解明することで、復興過程におけるガバナンス形態の動的構築プロセスを明らかにできる。
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Research Products
(10 results)