2018 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノムワイドsiRNAスクリーニング陽性因子解析によるSOD1構造制御機構の解明
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17J10965
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坪田 充司 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | SOD1 / 構造変化 / ALS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ALS発症の原因と考えられる変異型SOD1と小胞体局在タンパク質Derlin-1の結合を介した小胞体ストレスによって引き起こされる運動神経細胞死を背景とし、野生型SOD1がALS発症に関与するか検討することを最終的な目標としている。先行研究において野生型SOD1が亜鉛欠乏下で変異型様の構造に変化しDerlin-1 と結合することが示されており、野生型SOD1であっても変異型様構造をとりALS発症に寄与する可能性がある。我々はSOD1構造変化に介在する因子の探索を目的としたゲノムワイドsiRNAスクリーニングを実施した。前年度までは亜鉛欠乏下でSOD1の構造変化に必要な因子として亜鉛トランスポーターZIP13を、SOD1の正常な構造維持や変異型様構造のSOD1の分解などを含むSOD1プロテオスタシス維持に必要な因子として細胞内輸送を担うDynactin-1を選出、解析し、SOD1構造変化機構の解明を目指していた。これまでの解析からこれらの因子らはSOD1の構造変化に対して直接作用する分子であると予想していたため、昨年度はZIP13やDynactin-1の上流でこれら因子の活性を制御するような因子の探索とその解析をゲノムワイドsiRNAスクリーニングの結果を利用し行った。スクリーニングにおいてsiRNAでの遺伝子発現抑制によってSOD1の構造変化を強く減弱させたある分子に注目し解析を行い、現在までにその分子の機能阻害剤の処置、また遺伝子発現の抑制によって亜鉛欠乏依存的なSOD1の構造変化が減弱する結果をスクリーニングとは異なる実験系で得ている。現在は昨年度までの結果をもとに、その分子を中心とした細胞機能がSOD1の構造変化に関与するか検証を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、ゲノムワイドsiRNAスクリーニングの陽性因子である亜鉛トランスポーターZIP13、また細胞内輸送を担うDynactin-1に着目し、機能解析を行うことでSOD1の構造制御メカニズムの解明に取り組んできた。当初からこれらの因子はSOD1の構造を直接的に変化させる実行因子の役割を担っていると予想していたため、昨年度はそれら実行因子の機能を制御する因子の探索、同定をスクリーニングの結果を利用し試みた。 その結果、それら実行因子の機能を制御する因子としてある分子がその候補として得られ、現在はその分子を中心とした細胞機能を解析することで、SOD1構造制御メカニズムの全貌の解明に取り組んでいる。 以上の結果は昨年度までの計画からは逸脱しながらも、予期していなかった分子がSOD1の構造制御に関与することを見いだすことができた成果であると考えている。以前のようにSOD1構造制御の実行因子の周辺のみの解析だけではなく、さらに上流でSOD1の構造を制御する可能性が高い分子を見出すことができたためSOD1構造制御メカニズムの解明という研究課題にに対して、概ね順調に進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はSOD1の構造制御メカニズムを分子レベルで解明することを目的としている。研究開始当初から注目し続けている、ゲノムワイドsiRNAスクリーニングの陽性因子である、亜鉛トランスポーターZIP13、また細胞内輸送を担うDynactin-1、さらに昨年度見出した分子に関する解析は全て、それぞれの過剰発現や遺伝子発現の抑制においてSOD1構造変化レベルを検出するという実験である。これらの実験結果からではSOD1の構造変化メカニズムを分子レベルで解明しているとは言えず、それぞれの分子に着目したより詳細な解析が必要であると考えている。 そこで、今年度はSOD1分子自体に着目した解析を行う予定である。具体的には質量分析法を用いてSOD1分子自体の結合因子の変化や翻訳後修飾を検出し、構造変化に関与するSOD1分子に起こる質的な変化を検出することを計画している。質量分析法で得られた結果とゲノムワイドsiRNAスクリーニングから得られたこれまでの解析結果を合わせることで、SOD1の構造変化に関与する分子の同定、並びにSOD1の構造制御メカニズムの分子レベルでの解明を目指す。
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