2017 Fiscal Year Annual Research Report
放電プラズマとH2Oの反応による活性種の生成過程の解明
Project/Area Number |
17J11124
|
Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
川口 悟 室蘭工業大学, 工学研究科, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
|
Keywords | 活性窒素種 / 活性酸素種 / 放電プラズマ照射水 / モンテカルロシミュレーション / 電子輸送係数 / 高次の係数 / 電子衝突断面積 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は放電プラズマ照射水中の活性酸素種(ROS)&活性窒素種(RNS)の生成過程の調査,気相中の放電プラズマのシミュレーションで必要となるN2ガスの電子衝突断面積セットの推定ならびにプラズマシミュレーションで用いられる電子数密度の連続の式に表れる高次の係数D3と電子到着時間分布より得られるαパラメータの関係を検討した。 ①放電プラズマ照射水中のROS&RNSの生成過程の解明: 酸解離平衡(NO2- + H+ ⇔ HNO2)および4種類の化学反応(HNO2 + H2O2 + H+ → ONOOH + H2O + H+, ONOOH → OH + NO2 (24%) or NO3- + H+ (76%), OH + OH → H2O2, 2NO2 + H2O → NO2- + NO3- + 2H+)を考慮した放電プラズマ照射水中のROS&RNSの生成反応モデルを構築し,このモデルに基づく0次元シミュレーションによって得られたNO2-, NO3-, H2O2の濃度の計算値は実測値と概ね一致することがわかった。 ②N2ガスの電子衝突断面積の推定: モンテカルロシミュレーション(MCS)を用いた電子スオーム法によって,電子ドリフト速度,電離係数,縦方向拡散係数の実測値を再現するN2ガスの電子衝突断面積セットを決定した。換算電界E/Nが2,000 Td以上の範囲において,E/Nの増加に伴って低下する電離係数の実測値を再現するためには,非弾性衝突後の電子の散乱方向依存性および電離衝突で生成される電子のエネルギー分布を考慮する必要があることを明らかにした。 ③高次の係数D3と電子到着時間分布より得られるαパラメータの関係の検討: D3とαパラメータの関係式を導出するとともに,CH4ガスおよびSF6ガス中のD3とαパラメータをMCSによって求め,D3の計算値をαパラメータから得られるD3 (D′3)の値と比較することで導出した関係式の妥当性を検証した。その結果,電離係数が十分に低い範囲のE/Nにおいて,D3とD′3の計算値が一致することがわかり,導出した関係式が成り立つことが確認された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,①COMSOL Multiphysicsを用いた水上パルス放電プラズマの発生によって生成される気相中と液中のROS/RNSとそのプリカーサの生成量の導出,②シミュレーションで使用されるN2ガス等の電子衝突断面積の評価と推定を行うことを目標としていた。 ①については,水面へのROS/RNSプリカーサの入射フラックスを仮定した0次元レート方程式解析により,水中のROS/RNS生成量を導出し,得られた値と実測値の比較により,水中のROS/RNS生成過程を検討した。また,プラズマシミュレーションで使用される電子群連続の式に表れる高次の係数を実験的に導出する方法を提案した。高次の係数は,これまで測定が困難とされてきたが,本研究で提案する方法により,実験的に導出できるようになることが期待され,プラズマシミュレーションの高精度化に貢献できると思われる。得られた成果を国内外の学会で発表するとともに論文誌に投稿している。 ②については,N2ガスの正確な電子衝突断面積セットを提案し,得られた成果を国内学会で発表した。 気相中のROS/RNSとそのプリカーサの生成シミュレーション,O2ガス等の電子衝突断面積の評価,修正など進行中のものもあるが,本研究課題はおおむね順調に進展していると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1) 本年度までに完了予定であった,O2ガス,Arガス等の電子衝突断面積セットの評価と推定を30年度前半に完了させる。 (2) 並行して,COMSOL Multiphysicsを用いて,水上パルス放電プラズマのシミュレーションを行い,プラズマ中で生成されるROS/RNSのプリカーサの水面への入射フラックスを求める。得られたプリカーサの入射フラックスおよび前年度に推定した水中のROS/RNS生成反応モデルを用いて,水中のROS/RNS生成シミュレーションを行い,水中のROS/RNSの生成量を導出する。その後,生成量の計算値を実験値と比較し,比較結果を反応モデルにフィードバックして,確かなROS/RNS生成反応モデルを構築する。 (3) モデルの確立後,ガス組成,気相中の水蒸気量,水の導電率とpH,放電範囲および印加電圧が水中のROS/RNS生成に及ぼす影響をシミュレートし,ROS/RNSを効率的あるいは選択的に生成する条件を明らかにする。 (4) 得られた成果を国内および国外の学会で発表するとともに,論文としてまとめ投稿する。
|
Research Products
(9 results)