2017 Fiscal Year Annual Research Report
気泡の微細化による膜ファウリングの抑制と染色廃水の脱色性能の向上
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17J11210
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
山梨 由布 群馬大学, 大学院理工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 染料分解 / 脱色 / 芳香族アミン / ファインバブル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、染色廃水を効率的かつ安定的に処理するために、膜分離活性汚泥法(MBR)のエアレーションにファインバブル(微細な気泡)を用いることにより、曝気動力の削減と膜ファウリングの抑制および染料の脱色・分解を同時に実現できることを示すことである。本年度は、安定的な染色排水の脱色を行う為に必要な、生物処理槽内の微生物群集について検討を行った。本研究では、生成する芳香族アミンの分解を担う微生物の組み合わせ(コンパニオンストレイン)と、エアレーションのせん断ストレスの低減の二つが生物処理による脱色を持続させる鍵であると考えている。複数の微生物を組み合わせることで脱色と芳香族アミン分解を促進させることが可能であると考え、脱色能力を持つ分離株を用いて、脱色を促進する微生物の組み合わせの検討を行った。また、検討した微生物を用いて、静置(酸素の供給無し)とファインバブル(気泡径100μm以下の微細な気泡による酸素の供給有り)で実染色排水の脱色試験を行った。その結果、脱色能力の高い株と脱色能力の低い株を混合した場合、脱色能力の高い株が単独の場合と比べて、より高濃度の染料において脱色し、その脱色速度は速かった。特にEnterococcus faecalis近縁種とBacillus属の株の組み合わせは、共存することで脱色速度が速くなった。また、検討した微生物の組み合わせを用いて、実染色排水の脱色を試みたところ、静置とファインバブルどちらの条件においても脱色し、脱色速度に大きな差は見られなかった。このとき、有機物の減少が見られなかったことから、有機物分解を促進する更なるコンパニオンストレインの検討が必要であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度、1年目はファインバブル(微細気泡)を用いた、脱色菌の多糖類生成抑制を研究する予定であった。しかし、平成30年度、二年目の課題で取り組む予定であった脱色反応の結果生成する阻害物質の影響を抑えて脱色反応を連続的に進めることに関する知見が得られたため、染料分解が最適となる微生物群集を獲得することを優先した。このことにより、実際の染色排水処理では、単一の細菌に比べて複数の細菌が存在するほうが、より安定的な脱色が見込めることが分かった。特に脱色能力を持つEnterococcus faecalis近縁種の1株と脱色能力の低いBacillus属の種が異なる6株を組み合わせたところ、高濃度の染料(1500mg/L)を脱色した。Bacillus属の種の組み合わせによって、脱色の程度が異なったことから、微生物間の相互作用が異なる可能性を得た。微生物間の相互作用にどのような物質のやりとりがあるのか、またそれによる代謝の変化があったのかを調べることで脱色を促進した理由を明らかにできる。以上の理由により、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で得られた染料を脱色する微生物の組み合わせは、脱色後の有機物量が減少しなかった。このことから、有機物分解を促進するような株の組み合わせをさらに検討する必要がある。また、組み合わせた株の各役割を明らかにするため、染料脱色能力だけでなく、脱色後に生成する芳香族アミンの分解能力についても評価する必要がある。さらに、微生物間の相互作用を明らかにするために、まずはFISH法を用いて脱色時の微生物分布を把握する。 一方で、本研究ではファインバブルが微生物の細胞外多糖類の生成を抑制すると考えている。本研究で得られた微生物の組み合わせにおいて、ファインバブルと静置、通常のエアレーションの3つの方法で、微生物の細胞外多糖類の生成抑制の検討を行う。まず、得られた微生物が生成する多糖類の糖鎖は不明であるため、多糖類を検出するための蛍光レクチンには特異性の異なる約15種類を用い、得られた微生物の細胞外多糖類を検出できる蛍光レクチンを特定する。次に、染料無しの条件でファインバブル、静置、通常エアレーションで培養した微生物の多糖類を蛍光レクチン染色し、イメージングフローサイトメトリーを用いて細胞外多糖類の生成量を比較する。続いて、染料の有る条件で同様の比較を行う。これまでの実験から微生物の細胞表面上に染料が付着する様子が観察されているため、染料がある場合と染料が無い場合の比較は重要であると考えている。
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