2017 Fiscal Year Annual Research Report
骨格筋の性状変化に応じたリン脂質の脂肪酸組成変化の機序と生物学的意義の解明
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17J11322
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
妹尾 奈波 静岡県立大学, 薬食生命科学総合学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | リン脂質 / 多価不飽和脂肪酸 / 脂肪酸 / 骨格筋 |
Outline of Annual Research Achievements |
リン脂質は生体膜を構成する主要成分である。リン脂質の種類は組織によって異なるほか、環境に応じて変化する。骨格筋に含まれるリン脂質は、運動トレーニングや筋萎縮によって変化することが報告されているが、その機序や骨格筋機能への影響は不明である。これまでの研究によって、骨格筋では、性状変化に応じて多価不飽和脂肪酸が結合したリン脂質 (PUFA-PL)が変化することが明らかになった。本研究では、骨格筋の性状変化に応じてPUFA-PL量が変化する機序と、その変化がトレーニングや萎縮に伴う筋機能の変化にどのように影響するのかを解明することを目的としている。今年度は、トレーニングや筋萎縮で認められる骨格筋の機能変化にPUFA-PLが寄与するか否かを明らかにするため、培養骨格筋細胞とマウスの骨格筋を用いて、PUFA-PL量を変化させた骨格筋モデルの作成に取り組んだ。 (1) 培養骨格筋細胞を用いた検討: 通常の培養条件では、細胞内リン脂質にほとんどPUFAが含まれないため、培地にPUFAを添加した。その結果、PUFA含有培地で細胞を培養した場合に、PUFA-PL量が増加することが確認できた。 (2) エレクトロポレーションによるマウス骨格筋でのリン脂質合成酵素の発現抑制: PUFA-PLの合成に関わる酵素の発現を、マウス骨格筋にエレクトロポレーションを用いて合成siRNAを導入することにより抑制した。これにより、導入した骨格筋における当該酵素の遺伝子発現量は50%程度低下することが確認できたが、リン脂質の脂肪酸組成への影響は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、内容に適宜変更を加えながら順調に進捗している。本年度は、本研究のポイントとなるリン脂質量を変化させた培養細胞のモデルとマウス骨格筋のモデルの作出に挑んだ。その手法である培養細胞への脂肪酸添加方法や、エレクトロポレーション法の条件を確立することができた。また、本研究で得られた技術を活用した研究成果を、筆頭著者として英文専門誌Journal of Nutritional Biochemistryに投稿し、受理、公表済みとなった。関連分野の研究成果を、American Journal of Physiology - Regulatory, Integrative and Comparative Physiologyに、共同著者として発表した。さらに、これまで実施した研究成果についても英文原著論文を執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、リン脂質量を変化させた培養細胞のモデルとマウス骨格筋のモデルの作出を行う。特に、マウス骨格筋のモデル作出については、エレクトロポレーション法によるリン脂質合成酵素の発現抑制効率に改善の余地が見られるため、この点を重点的に検討する。また、作出した培養細胞のモデルとマウス骨格筋のモデルを用いて、膜タンパク質の機能や筋持久力の解析を行い、リン脂質が骨格筋機能に与える影響の解明を目指す。さらに、マウスのモデルを発展させ、運動トレーニングの効果や筋萎縮の進展にリン脂質が与える影響についても検討を進める。
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