2017 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロスケール多孔体内相変化素過程の解明とループヒートパイプ高熱流束化への応用
Project/Area Number |
17J11419
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小田切 公秀 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
|
Keywords | ループヒートパイプ / 気液熱流動現象 / 相変化 / 多孔質体 / 国際研究者交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はループヒートパイプ(Loop Heat Pipe, 以降LHP)の蒸発器多孔体における相変化素過程の解明および基礎学理の理解に基づいた高熱流束型LHP技術の確立を研究目的とする。研究手法は(1)マイクロスケール赤外・可視観察による多孔体熱流動現象の可視化、(3)熱流動現象の物理モデル構築、(3)高性能多孔体構造の提案および実証、(4)高熱流束LHPシステム実証試験である。これまでに(1)および(2)を実施し、今年度は(3)に取り組んだ。さらに(2)のモデル構築を通して得た知見を基に海外研究機関(英国、ブライトン大学)での研究に取り組んだ。 物理モデルに基づき、熱伝達性能を向上させる設計指針として(a)蒸気溝幅を小さくし、溝本数を増加させること、(b)多孔体と作動流体の濡れ性向上が有効であることを明らかにした。これらの設計手法はマイクロスケール赤外・可視観察装置を用いて、小型試料で実際に熱伝達性能が向上することを実証することに成功した。(b)の成果は従来のLHP蒸発器性能向上手法としては考えられていなかった新規性の高い手法である。またモデル構築を通して得た薄液膜における相変化挙動に関する知識を基に、英国ブライトン大学で動的な液膜相変化の熱伝達性能予測モデルに関する研究に取り組んだ。本滞在で得られたモデル構築に関する知見は本研究へフィードバックし、今後熱流動モデルおよびLHPモデルの改良に取り組む予定である。 今後はこれまでの成果に基づいて高熱流束LHPシステムの構築および実証を目指す。また実験結果と物理モデルを総合し、最終的に高熱流束LHP最適設計理論を確立することを目指す。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでマイクロスケール赤外・可視観察装置を用いた多孔体熱流動現象の可視化および物理数学モデル構築を実施し、さらに物理モデルに基づいた高性能化形状の提案および実証に成功した。来年度実施予定の高熱流束LHPシステム実証試験および最適設計理論構築の準備は概ねできていると考えるため、予定通りに研究進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度はまず、これまでに考案した高性能型多孔体構造をLHPの蒸発器構造に適用し、システムレベルでの実証(高熱流束型LHPのシステム実証試験)に取り組む。具体的には(1)多孔体に加工する蒸気溝幅を0.2mmまで小さくした蒸発器を製作し、性能評価試験を行う。これは現在までの進捗状況で述べた高性能化手法(a)のシステムレベル実証の位置づけで行う。さらに(2)蒸発器内のステンレス多孔体に処理を施すことで作動流体との濡れ性を向上させた蒸発器も製作し、性能評価試験を実施する予定である。同様にこれは高性能化手法(b)のシステム実証の位置づけである。性能評価試験実施後は実験結果をまとめ、モデル計算結果との比較を行う。実験データとの比較を行いながらモデルの改善を行う予定である。最終的にはLHPシステム全体の熱輸送性能が予測可能なモデルに発展させる。このモデルを用いて蒸気溝形状、多孔体特性などの解析的パラメトリックスタディを実施し、最終的に高熱流束LHP設計理論を確立することを目指す。またシステムレベル実証試験実施に並行して、高熱流束型多孔体構造の考案および実証にも取り組む。本研究で構築したマイクロスケール赤外・可視観察プラットフォームの製作・評価・再設計のサイクルをより早く回せるという特長を活かしながら、より多くの独創的な多孔体構造を創出することを目指す。
|