2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17J11423
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Research Institution | Kyoto University |
Research Fellow |
澤田 晃一郎 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 多重双曲的曲線 / Grothendieck予想 / 双曲的曲線の配置空間 / 次数付きLie代数 / 単遠アーベル的復元アルゴリズム / 一般化ファイバー部分群 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、標数0の体上の多重双曲的曲線について、大きく分けて2つの結果を得た。 1、(一般化劣p進体と呼ばれる型の体上の)多重双曲的曲線の弱い形のGrothendieck予想を肯定的に解決した。多重双曲的曲線についての通常のGrothendieck予想、すなわち、多重双曲的曲線の同型類が基本群(と、基本群から基礎体の絶対Galois群への全射)からただ1つに決まるという予想は、現状次元が5以上で未解決である。今回得られたのは、そのある意味で弱い形の予想、すなわち、多重双曲的曲線の同型類が基本群から有限通りには決まるという予想の肯定的解決である。この結果についての論文はおおよそ執筆済みであり、若干の修正後投稿予定である。また、この結果を紹介する講演を数回行った。 2、多重双曲的曲線の特別な場合である、双曲的曲線の配置空間と呼ばれる多様体について、それに付随するLie代数から種々の幾何的不変量を復元する"単遠アーベル的復元アルゴリズム"を得た。標数0の代数閉体上の双曲的曲線の配置空間の基本群からの単遠アーベル的復元が星氏、南出氏、望月氏による共同研究で得られていたが、この結果はそのLie代数類似である。また、その応用として、一般化ファイバー部分群と呼ばれる、幾何的基本群の部分群の族について、Lie代数における対応するイデアルの復元方法を精査することで、(従来の研究で得られていた、双曲的曲線の型に依存し、やや複雑なものとは異なる方法で)基本群から統一的に復元するアルゴリズムを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多重双曲的曲線について、通常のGrothendieck予想が現状未解決であるため、Grothendieck予想、あるいはその弱形の予想が成立するか否かという問題はかねてからの懸案事項であった。通常の予想の解決には至らなかったが、弱形の予想の肯定的解決が得られたことは大変有意義であったように思われる。 また、双曲的曲線の配置空間に付随するLie代数については、(Lie代数に関する研究は数多く存在するが)基本群からの復元ではなくLie代数からの"単遠アーベル的復元アルゴリズム"を考えるという点で従来にはなかった視点からの研究であり、また、基本群の研究への応用も得られた。この結果は、それ自身の新たな手法などが興味深いだけでなく、今後のLie代数の研究やその基本群への応用の可能性の示唆などを含んでいると考えられ、双曲的曲線の配置空間の研究として意義が深いものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
多重双曲的曲線については、主に、通常のGrothendieck予想や基本群からの種々の幾何的不変量の復元について考察する。また、双曲的曲線の配置空間については、基本群だけでなくLie代数を用いた研究を行い、さらに理解を深めていくことを目標とする。
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Research Products
(5 results)