2017 Fiscal Year Annual Research Report
ペルム紀末からジュラ紀の還元的海洋環境下における海底鉱物資源形成過程の解明
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17J11607
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| Research Institution | Kumamoto University |
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Principal Investigator |
冨松 由希 熊本大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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2017-04-26 – 2020-03-31
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| Keywords | 層状マンガン鉱床 / ジュラ紀付加体 / 放散虫化石 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究は，ペルム紀末からジュラ紀の付加体中に産する海洋鉱物資源の層状マンガン鉱床を対象にその形成過程を明らかにすることを目的としている．これまで主に大分県佐伯地域で調査を行ってきたが，平成29年度では研究対象地域を広げ，マンガン鉱床の形成過程解読の研究に適した調査地を見つけるために，他地域のジュラ紀付加体の層状チャート中に産する層状マンガン鉱床を対象とした地質調査を行った．
野外調査では，先行研究より層状チャート中の層状マンガン鉱床の報告がある，岐阜県舟伏山南方地域（神崎川南付近），京都府京北地域（足谷），京都府四ッ谷地域（玉岩），岩手県宮古市南西部地域（大谷山）において，マンガン鉱床の観察及び産状と岩相層序に関する記載を行い，岩石試料の採取を行った．また，採取した層状チャート試料から時代決定に有効な放散虫化石を抽出し，その堆積年代は，岐阜県舟伏山南方地域，京都府四ッ谷地域が三畳紀後期，京都府京北地域はまだ詳細な時代は決定できていないが，少なくともジュラ紀であることを明らかにした．
平成29年度に採取した約200の層状チャートおよびマンガン鉱石試料については，粉砕機（マルチビーズショッカー）を用いて粉末試料を作成した．粉末試料はバインダー（セルロース）と混合したのち，プレス機によってペレットを作成した．蛍光X線分析装置を用いてその化学組成についての分析を行い，特に鉄マンガンに加えて酸化還元環境に鋭敏なクロム, 亜鉛, ニッケルなどの元素に着目した定量分析を進めている．
今年度の成果は，他地域のジュラ紀付加体で報告されているマンガン鉱床の胚胎層準の年代と調和的であり，ジュラ紀や三畳紀後期の時代のパンサラサ海遠洋域において比較的広範囲にわたって層状マンガン鉱床が同時期に形成した可能性を示唆するものとなった．これらの結果は学会にて発表した．
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は，以下の4つの研究を予定していた．
①他地域のジュラ紀付加体での野外調査
②マンガン鉱床の形成年代の推定
③X線分析顕微鏡による主要分析，粉末X線回折，蛍光X線分析
今年度は，①については岩手，京都，岐阜において野外調査に加えてイタリアでの調査も行い約300試料の岩石試料を採取した．②については，①で採取したマンガン鉱床に付随する層状チャート（約50試料）から放散虫化石を抽出し，化石の同定も進み，堆積年代の決定を行なっている．③については，X線分析顕微鏡が機械トラブルにより今年度使用不可能であったが，①で採取した岩石試料の分析用粉末試料の作成及び蛍光X線分析による主要・微量分析を進めており，③で予定していた研究内容を補うことができた．以上の研究進歩状況から，おおむね順調に進展していると言える．
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| Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の結果を踏まえて，平成30年度は以下の3つの研究を行う．
1．野外調査：平成29年度に調査した丹波―美濃帯での調査を引き続けて行い，マンガン鉱石および上下の層準から微化石・化学分析用の試料の採取を行う．放散虫化石の保存状態が悪く年代決定ができなかった地域については，すでに採取した試料からの抽出作業と追加調査を行う．また，平成29年度にパンサラッサ遠洋域で堆積し，マンガン鉱床を挟まない遠洋性堆積岩が分布する岐阜県犬山地域，そしてテチス海にて堆積しマンガン濃集層を挟む遠洋性堆積岩が分布するイタリア南部にて採取した岩石試料に対して微化石層序・化学層序の確立を進め，これまでの研究結果との比較検討を行う予定である．
2．蛍光X線分析装置による定量分析：平成30年度に新たに得られる岩石試料について，粉末試料および，ペレットを形成し，蛍光X線分析装置を用いた定量分析を行う．分析により得られた結果を用いて，マンガンやクロム，ニッケル，亜鉛などの酸化還元環境に鋭敏な元素に着目した化学層序を作成する．その結果をもとに地球化学的プロキシを用いてマンガン濃集層を形成したマンガンの輸送経路（海底熱水活動による供給，風成塵の輸送，大陸風化による河川からの供給）を明らかにする．
3．誘導結合プラズマ質量分析装置による定量分析：2の研究により，酸化還元環境に鋭敏な元素の異常濃集がみられたセクションの試料については，バナジウム，モリブデン，ウランなどの微量元素や希土類元素の定量分析を行う．2．3の研究によって得られた結果から，マンガン鉱床が形成する時代で起こった海洋中でのイベント（海洋環境変動，大規模火成活動など）について検討を進める．
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