2017 Fiscal Year Annual Research Report
国内外来魚における遺伝的撹乱を介した侵略性獲得メカニズムの検証
Project/Area Number |
17J40134
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
中野 繭 信州大学, 理学部, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 国内外来種 / 遺伝的撹乱 / 交雑 / 淡水魚 / 生活史戦略 |
Outline of Annual Research Achievements |
【背景】遺伝的撹乱によって獲得された新規の遺伝的多様性が外来種の侵略性invasibilityや迅速な適応進化の可能性evolvabilityを増長する可能性が指摘されている。しかし、遺伝的撹乱と侵略性を結び付ける至近的メカニズムについては明らかにされていない。日本を含む東アジアを原産とする小型コイ科魚類モツゴは、国際的な侵略的外来種であり、日本でも国内外に由来するモツゴが各地に移植されている。一方、モツゴと交雑するほど近縁な在来種シナイモツゴ(以下シナイ)は、絶滅危惧IA類に指定されており、遺伝的多様性の喪失が懸念されている。 【目的】遺伝的撹乱がモツゴ属魚類のスニーキング行動を増進させ、遺伝的多様性の獲得、ならびに分布拡大に寄与するという「モツゴの侵略性獲得モデル」を検証するために、(1)外来種モツゴと絶滅危惧種シナイの生活史戦略、(2)マイクロサテライト解析によるモツゴの遺伝的撹乱の実態、および(3)遺伝的多様度(血縁度)とスニーキング率の関係を明らかにすることを目的とした。 【成果】(1)受精卵より同一環境で飼育するcommon-gaeden実験を行った。その結果、モツゴはシナイと比較して成長速度が早いこと、モツゴ雄はシナイよりも早い時期に婚姻色および攻撃性を発現し、なわばりを形成すること、さらにモツゴの成長速度は単独飼育<<混合飼育となり、シナイの成長速度は単独飼育>>混合飼育となる傾向が観察された。いずれの結果もシナイを駆逐しながら分布を拡大するモツゴの侵略性を支持した。次に野外から採集した個体を用いて生殖腺投資量および精子活性の測定を行った。その結果、モツゴの精子はシナイよりも有意に高い濃度を示し、モツゴの小型雄において生殖腺指数が中~大型雄よりも高く、スニーカーと推測される個体が見つかった。(3)シナイの異系間雑種およびモツゴの近交系の作出・飼育を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究者の不測の病気により、対象生物であるモツゴ属魚類の採卵・調査・実験を完了することができず、サンプルを十分に収集することができなかったため、前述【研究実績の概要】の項にある目的(2)マイクロサテライト解析に遅れが生じた。次年度の計画(生活史の種間比較、特に野生集団に由来する個体の生殖腺投資量)を一部繰り上げ、3年間の研究計画を遂行できるよう調整した。その他の実験は概ね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 飼育実験を継続し、スニーキング成功率を調べるために、室内外から受精卵を収集する。(2) モツゴ属魚類を対象とするマイクロサテライト解析(種判別、個体判別、親子判別)のルーチン用プロトコルを確立する。(3) 血縁とスニーキング頻度の関係を明らかにするための行動実験にむけて、シナイの異系交配個体、ならびに、モツゴの近交系の作出を行う。
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Research Products
(2 results)