2018 Fiscal Year Annual Research Report
RUNX3エンハンサー活性化によるがん幹細胞発生の分子基盤解明
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17J40163
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
横溝 貴子 熊本大学, 国際先端医学研究機構, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | Runx3 / MDS / Myc |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、エピゲノム異常がもたらすがん幹細胞発生と病態進展の分子基盤の解明を目指し、研究を進めている。がん幹細胞の病態基盤を理解するために、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性腫瘍(MPN)や急性骨髄性白血病(AML)で機能喪失型変異を認めるDNA脱メチル化酵素TET2変異造血幹細胞に、予後不良な進行期MDSで高発現する転写因子RUNX3を過剰発現させたMDS/AMLモデルマウスを新規に作製した。前年度までにRUNX3強発現/ Tet2欠損マウスのMDS発症前後の造血幹細胞を採取して、遺伝子発現解析をRNAシーケンスによって実施したところ、RUNX3の強発現によりがん遺伝子であるMycのgene setが活性化していることが明らかとなった。 本年度は、Runx3過剰発現造血幹前駆細胞においてみられたMycパスウェイについて詳細な解析を行った。Mycは様々な因子と協調して作用していることが知られているが、Runx3過剰発現造血幹前駆細胞では、がん化に寄与するMAXとの協調パスウェイが活性化していることをRNA-seq及びChIP-seqの解析より示した。 Runx3過剰発現造血幹前駆細胞において、Runx1の標的遺伝子の発現が有意に抑制されていることも明らかとした。Runx1はMDS患者において機能喪失型変異の報告が多数報告されている。Runx1のChIP-seqで同定された直接の標的遺伝子の発現がRunx3過剰発現造血幹前駆細胞で有意に発現抑制されていること、Runx1の標的遺伝子の発現制御をRunx3が量依存的に阻害するというデータも得た。このように、RUNX3強発現/ Tet2欠損造血幹前駆細胞では、がん遺伝子であるMycの活性化及びがん抑制遺伝子であるRunx1の機能阻害が起こり、MDS発症に寄与していることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エピゲノム異常がもたらすがん幹細胞発生と病態進展の分子基盤の解明を目指し、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性腫瘍(MPN)や急性骨髄性白血病(AML)で機能喪失型変異を認めるDNA脱メチル化酵素TET2変異造血幹細胞に、予後不良な進行期MDSで高発現する転写因子RUNX3を過剰発現させたMDS/AMLモデルマウスを新規に作製・解析を行なっている。当該年度では、前年度までに実施したRNAシーケンスに加え、Runx3, Runx1及びH3K27Acに対するChIPシーケンスのほか、ルシフェラーゼアッセイやアポトーシス/細胞周期の解析などを行い、RUNX3強発現/Tet2欠損マウスのMDS発症/病態進展の分子基盤の解析をさらに詳細に進めていった。その結果、Runx3はがん遺伝子Mycと協調して働いており、特に発がんに寄与するMYC/MAXパスウェイの活性化を誘導することを新たに見出した。また、Runx3の過剰発現はがん抑制遺伝子であるRunx1の発現及び機能阻害を引き起こし、MDS病態発症へと寄与していることを示した。以上のことから本研究の進捗状況は概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はMDS病態発症の過程で起こるRUNX3の発現活性化機構について解析を進めていく。 Runx3エンハンサー活性化を確認した上で、次にRunx3エンハンサー欠損MDSマウスを作製する。Runx3エンハンサー領域はマウスでも保存されており、eR3(-41)またeR3(-51)領域を欠失するeR3欠損マウスをCRISPR/Cas9ベクターを用いて作製をする。Tet2flox/flox;Cre-ERT2と交配したeR3delTet2 CKOマウスにタモキシフェン投与してTet2を欠損させる。非造血変異細胞の影響を避けるため、骨髄細胞を致死量放射線照射したLy5.1+野生型マウスに移植して疾患発症を観察する。Tet2欠損マウスでは長期間でMPNを発症するが、eR3delTet2欠損マウスはRunx3発現抑制によりMPN発症の遅延・抑制が推察される。以上より、Runx3エンハンサー領域の白血病幹細胞の発生と進展における機能を解明する。 RUNX3エンハンサー領域の重要性が確認された場合には、化合物ライブラリーを用いたRunx3エンハンサー機能を抑制して白血病幹細胞機能を阻害する低分子化合物”の基礎的検証を行う。さらに、MDS患者試料を用いて、eR3(-41)とeR3(-51)エンハンサー領域のターゲットシーケンスを実施して変異配列およびSNPの検出を試みる。この領域にはRUNX転写因子の結合配列も含まれており、変異を有する患者白血病細胞を用いて、ChIPまたはEMSA解析やリポーター解析によって、RUNX3の変異配列への結合能とエンハンサー活性化能を併せて評価する。
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Research Products
(1 results)