2018 Fiscal Year Annual Research Report
現代フランスにおける共和制モデルの変遷の分析によるシティズンシップ教育理念の探求
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17J40210
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
降旗 直子 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | フランス共和国市民 / シティズンシップ教育 / 道徳・公民教育 / フランス共和制モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、交付申請書に記載した「研究の目的」に基づき、下記の作業を遂行した。 まず、6月と12月に受入研究者の研究指導会にて研究計画及び研究の進捗状況に関する発表を行い、そこで指摘された内容をもとに研究課題の整理を行った。またそこでは、これまでに進めてきた研究の整理方法に関して助言をもらい、博士論文として一つの形にするための課題が明確になった。 上記の課題を解決するため、19世紀末の近代公教育成立期以降のフランス共和国市民の育成をめぐる政策展開について、日仏における多数の先行研究や史資料に当たりながら、本研究が対象とする時期の前史を描き、論点や分析の視点を抽出した。史資料の収集については、6月末にフランス国立図書館で収集した。この作業を通じ、現代のフランスにおけるシティズンシップ教育政策をめぐっては、左派(共和派)と右派(リベラル派)の政治的対立があるにも関わらず、なぜ政策の基本理念は一貫するのか、という一見矛盾する問いに関する手がかりを得ることができた。 次に、上記のR. ドゥブレの二つの国家の類型論を指標としてフランスの共和制モデルを明らかにしようとする先行研究を収集し、それらを検討することで、本研究における分析枠組の構築を図った。その結果は、9月1日に日本教育学会において発表し、12月までに論文としてまとめた。その論文は、上記の研究指導会でも発表し、受入研究者から指導・助言を受けた。 さらに、研究協力者として参加している科研で、2015年版小学校「道徳・公民教育」学習指導要領の翻訳を分担した。また、3月にはその科研メンバーでフランスの私立学校、高等学校などを訪問し、授業見学及び教員へのインタビューなどを行った。こうした共同研究は、自身の研究を進める上でも相乗効果をあげており、フランスのシティズンシップ教育の在りようへの深い理解につなげることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に比べ、子育てと研究との両立が軌道に乗り始め、現在取り組んでいる博士論文の執筆作業や、史資料の収集の進捗に関しては、概ね順調に進められているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず、本研究が対象とする時期の前史部分の論文執筆を継続して行う。具体的には、フランスにおける80年代教育改革に影響を与えた「68年5月」以降の政策展開及び教育状況について実証的に分析を行い、論文にまとめる。 続いて、2012年から2019年にかけて出版・公開された先行研究を渉猟し、これまでにまとめた2012年以前の先行研究と合わせて検討した上で、論文にまとめる。 さらに、昨年度に構築した分析枠組をこれまでの研究に適用させ、5月末を目途に博士論文の第一稿を完成させる。そして6月には、受入研究者の研究指導会においてその第一稿を発表し、再検討が必要な箇所を明確にし、博士論文の完成度を高めていく。 9月末を目途に、論文の構成や注、引用、文献目録など細部を確認し、博士論文を完成させ、提出する。提出後は、公開審査会に向けて準備を行う。 また10月には、日本教育行政学会でこれまでの研究について発表を行う。ここで得られた知見は、論文にまとめ、年度末には『日本教育行政学会年報』に投稿する。
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Research Products
(3 results)