2019 Fiscal Year Research-status Report
集合知の情報集約過程の定量的記述と社会的学習の影響
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17K00347
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
守 真太郎 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (70296424)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 一昭 信州大学, 学術研究院理学系, 准教授 (20281040)
高橋 泰城 北海道大学, 文学研究院, 准教授 (60374170)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 社会的学習 / 時間相関 / デフォルト確率 / 相転移 / ハーディング |
Outline of Annual Research Achievements |
(i)社会学習や情報カスケードのモデルでイジング型の、つまり秩序変数を持つ相転移を示す非線形ポリア壺過程の秩序変数の漸近的な振る舞いを解析するため、確率微分方程式による定式化を行った。古典軌道とそのまわりのゆらぎとして近似的に扱い、臨界点近傍での秩序変数の振る舞いの理解に道筋をつけた。 (ii)デフォルト時系列データのモデル化については、前年度に行ったデフォルト相関の記述にベータ二項分布をもちいたモデルをアセット変数間の相関によりデフォルト相関を取り入れたMertonのモデルにした場合の解析を行った。ベータ二項分布を用い場合、デフォルトの時間相関がべき的に減衰する場合、べき指数の値の1を臨界値としたイジング型の相転移を起こし、デフォルト確率の推定量が収束しない相の存在を示した。Mertonモデルの場合も時間相関のべき指数の変化により相転移を示すが、それはデフォルト確率の推定量の収束の速さのサンプル数依存性に反映しものであった。このことは論文としてまとめ投稿中である。 (iii)社会学習の影響をアマゾンの商品のレビュー投稿データを用いて解析を行った。従来示唆された、過去のレビュー点数の新レビューの評価への社会的影響は確認できなかったが、投稿件数に対して過去の投稿数に比例した確率法則を発見した。一方、そうした確率法則が示唆するレビュー件数の分布関数と実際の分布関数に大きな差異が認められた。この差異は、現在社会問題となっているサクラ投稿によるものと考えている。社会的学習のモデル化によりサクラの検知やマーケティングとしてのサクラの有効性といった研究の方向性を見いだすことができた。 (iv)ネットワーク上の投票者モデルの応用として、前回のアメリカ大統領選挙での世論調査データの解析を行い、得票率が示すよりも非常に強い相関を示すことを見いだした。モデル化の方向性を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(i)計画していた実験の実施が遅れている。社会的学習エージェントの均衡解としてパレート解については実験データから確認することができ、論文として報告することができた。一方、ナッシュ解についてはパレート解の実験と同じ設定での実験を実施できていず、今年度の課題としたい。 (ii)理論およびデータ解析については順調にすすんでいる。社会的学習のモデル化手法をファイナンスでのクレジットリスク、特にデフォルト確率の推定量の振る舞いの相転移の研究に生かすことができた。また、社会問題となっているオンラインショッピングサイトでのサクラの検知のモデル化やマーケッティング戦略といった新しい研究の方向性を得ることもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度が最終年度であり、研究成果をまとめることに注力したい。 (i)非線形ポリア壺の臨界点近傍での秩序変数の振る舞いを理解する。(ii)社会的学習エージェントのナッシュ解の実験での検証。(iii)オンラインショッピングサイトのレビューでのサクラの検知とモデル化、マーケッティング戦略の数理。(iv)アメリカ大統領選挙の世論調査データのモデル化。(v)情報カスケード実験における被験者属性の推定。ハーディングが強い場合、EM法による推定方法の問題点を明らかにする。 以上の5点について現在進行中の研究をまとめる。
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Causes of Carryover |
COVIDの影響のため、研究協力者との打ち合わせの予定がキャンセルされたため。次年度の打ち合わせが可能なら次年度に、不可能なら論文の投稿関連費用として使用する。
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Research Products
(7 results)