2017 Fiscal Year Research-status Report
長距離移動マタニティの課題を起点にしたへき地の周産期・子育て環境支援システム構築
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17K00439
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Research Institution | Kushiro Public University of Economics |
Principal Investigator |
皆月 昭則 釧路公立大学, 経済学部, 教授 (90363712)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | スマートフォン / 妊婦 / 医療情報 / 危機管理 / 長距離 / 地域 / GPS / 位置情報 |
Outline of Annual Research Achievements |
北海道は,国土の22%の面積を有し,東北6県を上回る広大な地域である.対象地域は全国で最も産科の減少が進行している地域で,これまでも支援方法を模索し,非都市部の居住地周辺に産科が消滅したマタニティの病院受診の意思決定行動支援システム構築を継続研究してきた.釧路・根室圏と呼ばれる地域は,北海道の圏域分類で最も広大な面積を有しており,産科消滅によって,マタニティが病院受診する際には,1~2時間以上の長距離の移動時間が必要になっている.実際に根室圏の5自治体から釧路市の地域周産期センター病院へは,2時間以上(約160~120km以上)の長距離移動時間が必要である.病院受診へ向かう移動支援においては,マタニティ自身の体調の気づきや病院受診へ移動する意思決定行動を1分でも早くすることで,母子の生命の危険なリスクを軽減することが可能である.長距離移動マタニティへの安全・危機管理教育は,広大な地域と長距離移動が必然的であるため必要不可欠であるため,意思決定行動に結びつく日々の教育環境が必要であると考え,マタニティへのアプリを用いた情報・知識を伝える支援を検討した.本年度の研究開発では,マタニティアプリの設計をゼロから見直し開発し,2018年1月から公開配付した.アプリケーションは,出産予定日の確定診断後のマタニティに対して,在宅期間の約10ヶ月間にわたる情報・知識支援の他に,出産月には陣痛の間欠時間データから早期の受診の意思決定行動を支援し,GPSデータによる位置情報も取得・表示可能にしたことで病院への連絡・移動時の支援を可能にした.フロントエンド開発技術は,クロスプラットフォーム対応のモバイルアプリ開発言語でデバイスに依存しない環境でユーザーが利用可能になるように実装し,本人,家族,医療者などと記録データの共有をする際のバックエンド開発技術はクラウドに実装した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
長距離移動マタニティの課題を起点にしたへき地における周産期・子育て環境支援システム構築において,新型のマタニティアプリをメインに,マタニティの健康状態を管理するアプリも開発し検証を実施した.「産前(出産期)」では長距離移動マタニティの病院受診行動の支援,家族・地域の親和的ネットワーク形成について,アプリ配布時のアンケート調査で知見を得た.アプリケーションの画面デザイン,ボタンなどインターフェース(コントロール)の配置では,使用時の画面上部に現在日時と出産予定日の表示,中央には各種のチュートリアルの利用ボタン,電話連絡やメモ機能,陣痛計測機能などを配置し,下部には利用頻度が高くなる支援機能をグラフィカルユーザインターフェイスで配置した.操作シーケンスでは,アプリケーションの初回時に出産予定日を入力することで,使用開始の当日から出産予定日の期間を計算して,その後の使用時は,妊娠週数を推測導出して,妊娠週数に対応した情報や支援機能を自動提示するようにした.早期の病院受診行動の意思決定を支援する情報を伝える機能では,アプリケーション起動時のトップ画面の選択で,妊娠週数に対応したお母さんへの特記事項[例:8か月目のお母さんへ],妊娠期・出産に関する一般的な情報[妊娠期間で気になること・陣痛に関する情報]・知識[妊娠中にさけたほうがいいもの]などの情報を伝えるようになっており,マタニティ自身が学習できるようにした.他に病院までの長距離・長時間移動を想起させるなど.医療者の知見で作成した内容を吹き出し表示するようにした.検診記録の追加保存機能として,公的機関で配布される母子手帳の標準記録項目に準拠した記録が可能であり,検診結果や診察時の数値をアプリケーションへ集約的に記録することを実装した.
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Strategy for Future Research Activity |
公開配付したアプリのユーザーにアンケートとインタビュー(深層的な心理や意見)を獲得する調査を推進する.取得したデータや感想・意見をまとめて,医療情報学の学問的知見を交えながら,システム開発者・医療者と協力して分析してまとめて,アプリケーションの機能拡充に結びつける.2017年に拙研究室で開発したデータ可視化システムで北海道地域の医療機関への受療行動を可視化した成果を公開した.システムは市町村単位で集計されたオープンデータの閲覧性を高めており,ヒートマップやランキングの作成を簡便に実現する統計データ可視化アプリケーションであり,長距離移動マタニティや小児科受診の地域課題を中心にまとめて抽出した2017年の結果と照合する.東北6県を上回る広大な地域の北海道の道東地域で,最も産科の減少・消滅が進行している地域のマタニティ支援の産科救急を呼ぶための救急GPS機能によるアプリ機能を新型アプリに実装したが,どのように有効に使用できるのか検討する.当地域では,へき地の長距離移動をともなうマタニティの移動中の施設外分娩や大量出血などのケースがあり,広大な釧路・根室圏での周産期救急の集約化によってマタニティの長距離移動がともない,移動中のマタニティの異常は,緊急であり消防の救急隊を呼ぶ事例は,今後も発生すると予想される.当地域では長距離移動中にクルマ内で出産したケースもあり,乳児が低体温にならないようにするなどALSO/BLSO[産科救急処置訓練]で速やかな産科救急病院へ搬送が必要であり,その対応が,消防連絡からドクターヘリを緊急出動させるスムーズになるようにアプリの機能使用を前提に検討する.開発したアプリの機能のGPSデータが有効に利用できる環境として,親族や119番を迷わず呼べる機能とインターネットがオフラインでもGPSログを地図に移動予見する機能を追加開発できるのか関係機関と検討する.
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Causes of Carryover |
アプリ開発用に使用しているコンピュータやタブレットを更新していないためである.
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Remarks |
研究プロジェクトの説明と研究開発したアプリのダウンロードサイト
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Research Products
(12 results)