2018 Fiscal Year Research-status Report
下水処理水に残留する医薬品等による魚類の感染症誘発に対するリスク評価
Project/Area Number |
17K00583
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
仲山 慶 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 講師 (80380286)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 免疫毒性 / 医薬品 / 下水処理水 / コイ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,魚類を対象として感染症の発症を主要なエンドポイントとした免疫毒性評価手法を確立し,下水処理水中に含まれる医薬品等の感染症の発症リスクへの寄与を明らかにすることを目的としている。 平成30年度も前年度に引き続き,愛媛県内の下水処理場の放流水を定期的に採取し,医薬品および生活関連化学物質(PPCPs)のモニタリングを実施した。モニタリング調査の結果,解熱鎮痛消炎剤や一部の抗菌剤などが高頻度かつ比較的高濃度で検出され,前年度の調査結果と一致していた。 前年度までに確立した感染実験にて,死亡した個体からAeromonas salmonicidaを定量的PCR法にて検出するための条件検討を行った。魚体重約0.6 gのコイに対して本菌を感染させ,死亡個体から腹水を採取した。また,その他の発症個体(うち一部は死亡個体)の全魚体,鰓または内臓を採取し,DNAを抽出した。腹水および抽出DNAをテンプレートとして複数条件にてPCRを行ったが,A. salmonicidaは検出されなかった。このことから,本試験で用いたA. salmonicidaは全身感染を起こさず,局所的に病変部にて増殖するものと考えられた。 また,先行研究にてリポ多糖の存在下で魚体中への化学物質の取込量が増加する可能性が示されていたため,本研究においてもA. salmonicidaに感染したコイで医薬品の取込量が増えるかを,3種の医薬品の混合物を対象に検証した。その結果,3種の化合物のうち相対的に水溶性が高いものは,感染魚において60%ほど取込量が増加していた。一方,脂溶性が高い化合物は3割程度取込量が減少した。このことから,病原体への日和見感染が,易水溶性化学物質の取込量の増加による作用効果の増強を引き起こす可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
下水処理水中のPPCPsのモニタリングは計画通り実施しているものの,病原体として使用しているA. salmonicidaの感染部位の確認に想定以上の時間を費やしたため,試験条件の確立にやや時間を要した。現在,感染実験の諸条件の決定を急ピッチで進めており,平成31年度には化学物質の曝露試験を実施予定である。 一方,当初予定していなかった濃縮性試験を実施したことにより,A. salmonicida感染個体で非感染個体と比較して曝露物質の取込量が変化することが判明したことは,被検物質の選定根拠として重要な情報となった。
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Strategy for Future Research Activity |
感染実験の条件確定後直ちに,化学物質のコイ免疫系への影響を評価する。当初予定通り,2物質程度の試験を予定している。 現在,環境毒性学分野における国際学会において免疫毒性に関するセッションが設けられるなど,環境中での化学物質と感染症との関係について関心が高まっている。但し,現時点では病原体を用いた免疫毒性評価手法に関して満たすべき条件は何も定まっていない。すでに昨年,一昨年と国際会議の場で最低要件の提案を行っているが,今後の研究成果で,さらに同提案の根拠を提示したい。
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Causes of Carryover |
初年度からの繰越金に加え,一部の室内実験の実施スケジュールを最終年度に変更したことで,次年度使用額が生じた。平成30年度の研究成果で,感染実験に用いる菌の培養法の最適条件が定まったことから,繰越金は培養に要する機器の購入に充てる。
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Research Products
(3 results)