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2018 Fiscal Year Research-status Report

Effects of low level mercury contamination on health and reproduction in marine high trophic animals

Research Project

Project/Area Number 17K00588
Research InstitutionMeijo University

Principal Investigator

新妻 靖章  名城大学, 農学部, 教授 (00387763)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 大浦 健  名城大学, 農学部, 教授 (60315851)
Project Period (FY) 2017-04-01 – 2020-03-31
Keywords水銀 / 酸化ストレス / 繁殖行動 / ウミネコ
Outline of Annual Research Achievements

海鳥は海洋生態系の高次捕食者であり,食物連鎖により水銀を蓄積する.生体内に蓄積する水銀はほとんどがメチル化水銀で,毒性の高いことが知られている.野外で繁殖する鳥類を対象とした場合,低濃度であるため水銀汚染の影響を検出することは難しい.青森県八戸市蕪島で繁殖するウミネコの低濃度水銀汚染の長期的な傾向を調べるために,2012-2016年まで毎年約30羽の成鳥を捕獲し採集した血液を用いて,血中の水銀濃度と酸化ストレスを測定した.
その結果,水銀汚染の長期的な傾向では年平均約3.5-4.1 ppmの間で血中水銀濃度が推移し,2012年から2017年にかけて,血中水銀濃度が高まる傾向はなかった.酸化ストレスでは,酸化力の指標となるd-ROMsは血中水銀濃度と有意な関係はなかったが,抗酸化力の指標となるBAPでは血中水銀濃度が高くなると有意に低下した.重金属に汚染されると生体は様々な代謝機構により重金属を体外へ排出する.その際に体内のグルタチオンなどの抗酸化物質を使うことがある.そのため,体内の水銀濃度が高くなると抗酸化力の指標となるBAPの値が低くなったのかもしれない.低濃度の水銀汚染であっても,生体に影響があることが示された.
また,野外で繁殖するウミネコについて繁殖行動を観察した.観察したウミネコ親鳥(全てメス)を捕獲し,血中水銀濃度を測定した.ウミネコの水銀濃度は繁殖に影響があるとされているミツユビカモメと同じ範囲であった.ウミネコの繁殖行動の観察から抱卵行動に水銀の影響は見られなかったが,血中水銀濃度の高い個体ほど雛への給餌回数が有意に少なかった.体内に取り込まれた水銀がどのような機序で給餌行動に影響するのかは不明であるが,低濃度の水銀蓄積でも繁殖行動へ何らかの影響があることが初めて示された.

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究の目的は,海洋生態系の高次捕食者である海鳥類を研究対象とし,低濃度の水銀汚染の生体や繁殖への影響について,明らかにすることである.本研究により,低濃度の水銀汚染であっても,酸化ストレスを受けていることが,以前より保存していた血液サンプルを用いることにより,明らかにすることができた.また,長時間の繁殖行動の観察から,水銀濃度が高い親鳥ほど雛への給餌回数が有意に下がることが示され,たとえ低濃度の水銀汚染であっても,繁殖行動に何らかの影響があることが示された.野生動物の生態や行動に影響する環境要因は様々あるため,水銀による影響を検出できない恐れがあった.しかし,これまでの報告で卵殻が薄くなるといったレベルの汚染でなくとも,低濃度の水銀汚染により野生動物の行動に影響することが本研究によりはじめて検出されたと言える.

Strategy for Future Research Activity

昨年度の研究成果を踏まえ,引き続きウミネコの繁殖生態について,詳細な観察を行い,低濃度の水銀汚染による繁殖行動への影響を調べる.具体的には,抱卵温度,給餌頻度,成長速度,なわばり行動と水銀汚染の関係を調べる.また,内分泌器官である副腎に水銀が蓄積しやすいことが明らかとなっているため,コルチコステロン分泌に影響する可能性がある.コルチコステロンの分泌異常により,繁殖行動に何らかの変化があるのかを観察とコルチコステロンの分析から調べる.

Causes of Carryover

水銀分析の消耗部品の交換頻度が当初の予定よりも少なくなった.次年度は,これまでに採集したサンプルに加え,新たなサンプルが増えるため,分析の消耗品類を購入と分析の人件費として使用する.

  • Research Products

    (8 results)

All 2019 2018

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results) Presentation (6 results) (of which Invited: 1 results)

  • [Journal Article] コアホウドリPhoebastria immutabilisにおけるフォルトバーの羽根間の違い.2019

    • Author(s)
      牛田裕介・白井正樹・山下優希・伊藤光希・新妻靖章
    • Journal Title

      山階鳥類学雑誌

      Volume: 印刷中 Pages: 印刷中

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] 北海道におけるミサゴ成鳥と雛の水銀濃度ミサゴの水銀濃度.2019

    • Author(s)
      庄子晶子・杉山淳・谷日向子・新妻靖章
    • Journal Title

      日本鳥学会誌

      Volume: 印刷中 Pages: 印刷中

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] ハシボソミズナギドリの採餌行動と越冬海域選択2019

    • Author(s)
      安積 紗羅々,石井 千尋,池中 良徳,中山 翔太,石塚 真由美,新妻 靖章,綿貫 豊
    • Organizer
      第66回日本生態学会大会
  • [Presentation] 海鳥における水銀汚染と酸化ストレスの関係2018

    • Author(s)
      谷日向子,新妻靖章,水谷友一
    • Organizer
      日本鳥学会2018年度大会
  • [Presentation] ウミネコにおける個性と安静代謝量の関係2018

    • Author(s)
      西尾昂也,若尾直紀,新妻靖章
    • Organizer
      日本鳥学会2018年度大会
  • [Presentation] 土壌汚染がツバメの繁殖に与える影響ー糞を用いた鉛汚染モニタリングー2018

    • Author(s)
      宮田瑞輝,新妻靖章
    • Organizer
      日本鳥学会2018年度大会
  • [Presentation] 青森県蕪島におけるウミネコの水銀蓄積の現状2018

    • Author(s)
      新妻靖章
    • Organizer
      平成30年度メチル水銀研究ミーティング
    • Invited
  • [Presentation] ウミネコにおける水銀汚染と酸化ストレスおよび安定同位体比の関係2018

    • Author(s)
      新妻靖章,谷日向子
    • Organizer
      メタルバイオサイエンス研究会2018

URL: 

Published: 2019-12-27  

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