2017 Fiscal Year Research-status Report
金属スクラップ選別へのショート/ロングパルス同軸落射によるレーザープラズマ制御
Project/Area Number |
17K00620
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
柏倉 俊介 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (10589956)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | レーザー誘起ブレークダウン発光分光法 / LIBS |
Outline of Annual Research Achievements |
合金を中心とした素材中の元素分析法として近年注目されているレーザー誘起ブレークダウン発光分光法(Laser-Induced Breakdown Spectroscopy, LIBS)は、元素濃度のミリ秒オーダーでの高速計測を実現可能な一方で、パルスレーザーの出力安定性、周囲の雰囲気や対流の有無、およびパルスレーザー照射点における錆や汚染などによって生成するレーザープラズマの強度が経時的に大きく変化する。そこで本研究課題においてはLIBSにおいて一般的に用いられるパルス幅がナノ秒オーダーのパルスレーザー(以降レーザー1)に加えて、パルス幅がマイクロ秒オーダーのパルスレーザー(以降レーザー2)を擬同軸で照射することによりレーザープラズマ生成部の加温と表面の汚染や錆の除去を同時に行い、レーザー1によるレーザープラズマの安定生成をアシスト可能な計測システムを試作した。レーザー1レーザープラズマ生成用として波長532nmのNd:YAGレーザー(Minilite I, Continuum)を用い、水平方向から高耐力ミラーと集光レンズにて試料直上に落射した。一方でアシスト用のレーザー2にはNd:YAG基本波、波長1064nmのNd:YAGファイバーレーザー(JL-SP0226、日本レーザー)を用い、レーザー1の高耐力ミラーの直上から試料へと落射した。2種類のレーザーの照射タイミングはデジタルディレイジェネレータ(DG-8000, IWATSU)にてその照射タイミングをマイクロ秒オーダーでずらして制御し、生成したレーザープラズマ付近に光ファイバーを固定、小型分光器(LHR-UV3-7, StellarNet)へと導入した。試料には市販のアルミ合金(Al-Mg系, 5052番)を用い、1秒間の積算時間にてスペクトルの強度変化が安定に推移するのを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
進行状況が遅れている理由は主に2点ある。1点目は擬同軸の落射光学系の構築が非常に困難を極めたためである。異なる光源を同一地点に同軸照射する際には一般的にビームスプリッタやポラライザーが用いられ、本課題においても当初はこれらを用いた光学系の作製を試みたが、これらの光学素子は反射率が50%前後と低いものが多く、レーザーのエネルギーを効率よく十分に試料表面に伝達することは不可能であった。そこで代替手法としてレーザープラズマ生成用のレーザー1については1度だけ45度に配置した高耐力反射ミラーにて試料直上に落射し、レーザー2についてはその高耐力ミラーの直上からミラーの裏面を素通しして試料直上に落射する方法を選択した。この手法の場合、直上から照射したレーザー2に関しては高耐力ミラーの5mm程度の厚みに起因する屈折のためレーザー1との完全同軸落射を行うことは不可能となるが、大凡試料上の同一地点に落射が可能となったことを確認した。なお使用した高耐力レーザミラー(TFMHP-25.4C05-532, シグマ光機)についてはレーザー1の反射率はほぼ100%であり、レーザー2の透過率は90%程度であるため、十分なパルスエネルギーを送り込むことができるようになったと考えている。また2点目の理由は機械的なものであるがレーザー1の冷却水による循環冷却系の故障が多発したことによる。レーザー1は25年ほど前に製造されたものであり、光学系や回路を含めた電気系統は未だ現役使用が十分可能な状態にあるものの、駆動系を有する循環冷却系については定期的なメンテナンスが必要なものであり、この時期になって故障による漏水が頻発し、故障個所の特定やACポンプの交換、及びシーラント等による漏水処理対策に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度においてはレーザーエネルギーを十分に伝達可能な同軸光学系の試作に成功し、レーザー1も継続的に稼働できる状態にしたため、平成30年度においてはこの試作システムを用いて本格的な計測を行っていく。具体的には2次元分光器(12580型、分光計器)及びICCDカメラ(DH734T-18F, Andor)を組み合わせたイメージ分光光学系を用いて、2種類のレーザーの照射タイミングをずらした際のレーザープラズマの生成状況を時間的・空間的分布について計測する。 測定対象としてはFe, Ni, Cu, Zn, Alの純金属、及び蛍光X線分析用2元系標準試料(FXS 300シリーズ)のうち、0.5%程度の濃度域にあるSi, Mn, Ni, Cr, Mo, Al, Ti, Nb, Co, W, Vを予定している。これらは既に研究代表者が所属する研究室にてすでに所有しているものである。また、元々の表面の形状とショート/ロングパルスレーザー同軸落射後のクレーター形状及び体積をデジタルマイクロスコープ(VHX-5000, Keyence)により評価する。このクレーター及びHAZの広さ及び深さをレーザーのパルスエネルギー、2種類のレーザーの照射タイミング、反射率の異なる金属とパラメーター変化をさせながら測定することで、試料表面の性状がレーザー誘起プラズマからの発光強度に与える影響、及びロングパルス照射がその安定化に与える影響度について整理し明らかにする。
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