2017 Fiscal Year Research-status Report
鉄鋼スラグ由来陰イオン除去材の排水処理・汚染土壌処理への適用
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17K00630
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
村山 憲弘 関西大学, 環境都市工学部, 教授 (90340653)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 順一 関西大学, 環境都市工学部, 教授 (60247898)
松岡 光昭 関西大学, 環境都市工学部, 助教 (00778160)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 鉄鋼スラグ / 陰イオン除去材 / 層状複水酸化物 / 再資源化 / リサイクル / 水質浄化 |
Outline of Annual Research Achievements |
製鉄所で発生するいくつかの高炉スラグおよび製鋼スラグに対して、様々な固液比や酸濃度の条件で塩酸浸出を行った。様々なスラグの塩酸浸出挙動を調べると共に、層状複水酸化物(以下LDH)の出発原料となる塩酸浸出液に対して、化学組成や固液分離性などの観点からLDH原料としての適性を評価した。スラグの化学組成だけでなく、スラグの冷却履歴も塩酸浸出挙動や固液分離性に少なからず影響をおよぼすことが明らかになった。一連の実験結果に基づいて、LDH合成の原料に適したいくつかのスラグ浸出液を選定し、これらを出発原料に用いて共沈法と呼ばれる方法によりLDHの合成を行った。比較のために、スラグ組成を考慮した試薬由来LDHも併せて検討した。得られた生成物に対して、結晶構造の同定、粒度分布の測定、熱分解挙動の解析、比表面積の測定、表面構造の観察、化学組成の分析などを実施した。これらの研究結果から、スラグの化学組成に応じてLDHの合成条件を制御することにより、LDHを主成分とする陰イオン除去材が得られることがわかった。いくつかのスラグ由来LDHを用いて、水溶液中の有害陰イオン種(ホウ素、ヒ素、クロム、セレン)の除去試験を行った。一連の実験データをまとめて、工学的検討を行う際の基礎となる吸着等温線を得ることができた。スラグの化学組成に応じて適切な浸出条件やLDHの合成条件を設定することにより、希薄水溶液中の有害陰イオン種を効率よく除去できるLDHを調製できる可能性が示された。スラグの化学組成を考慮して合成した試薬由来LDHとその焼成物が、優れた陰イオン除去特性を示した。一部の有害イオン種に対して、除去後のLDHを加熱することによって再溶出されにくくなることがわかった。スラグLDH粉末の造粒物し、カラム操作によって連続的に有害陰イオンを除去できることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の主たる検討項目について、概ね予定通りの研究成果が得られたと判断している。スラグの物理的、化学的性質に基づいて、適切な条件でLDHを合成するための基礎的な知見が得られた点に工学的価値があると自己評価している。比較試験として行ったスラグ組成を模した試薬由来LDHがユニークな陰イオン除去特性を示したことは興味深いと考えている。LDH粉末の造粒物に対して、カラム操作によって連続的に有害陰イオンを除去できる方法を確立した。メカニズムは明らかではないが、一部の有害イオン種に対して加熱処理による不溶化効果が確認できた。次年度の研究展開に繋がる知見が得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、有害陰イオン種の除去・不溶化プロセスの設計に重要な指針を与える工学的現象の把握と解明に焦点を当てる。前述のごとく、共沈法により合成されたスラグLDHの粉体を造粒したり、LDH粉体と通水性を有するろ過材(ガラスや紙の繊維など)とを複合化させてこれらをカラムに充填することにより、連続的に有害陰イオン種の除去操作を行うことが可能になる。平成30年度は、スラグLDH粉体の造粒や複合化と、それらを用いたカラム法による連続除去・溶出操作の最適化・高効率化を予定している。様々なバインダーを選定して転動造粒を行うことや、LDHとガラス繊維とを複合化させて充填材を調製することを計画している。得られた材料を充填したカラムを作成し、有害陰イオン種を含む水溶液を連続的に投入して、様々な通液条件にて連続除去・溶出試験を行うことを考えている。最終的には、陰イオン種の除去や再溶出に関する破過曲線の実験データを採取することを計画している。引き続き、スラグLDHの中に取り込まれた有害陰イオン種が再溶出しないように不溶化する方法について検討を行う。有害イオン種を取り込んだLDHに対して加熱処理を行うことにより、LDHと有害物質との間で固溶体を形成させて有害物質の不溶化を図ることを考えている。この際、LDH内のイオン種の再溶出量におよぼす熱処理温度および処理時間の影響について、そのメカニズムの考察とともに詳細に検討することを予定している。最終的には、有害陰イオン種の希薄水溶液や汚染土壌に対して排水基準や溶出基準に適応できるような優れた除去プロセスを確立することを目指している。
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