2019 Fiscal Year Research-status Report
新規水素精製プロセスの構築を目指した耐久性に優れた水素分離膜の開発
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17K00634
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Research Institution | Research Institute of Innovative Technology for the Earth |
Principal Investigator |
伊藤 史典 公益財団法人地球環境産業技術研究機構, その他部局等, 研究員 (10366429)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 秀尚 公益財団法人地球環境産業技術研究機構, その他部局等, 主任研究員 (60446408)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 分離膜 / PVA / 水素精製 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、次の2点を主に検討した。①:開発した分離膜と、ポリビニルアルコール(PVA)単体で作製した膜の、温度:85℃,全圧:2.4 MPaでの実用化条件 (水蒸気:供給側のみ)におけるCO2とHe (H2の擬似ガスとして使用)の分離性能の確認。②: ①の性能結果を基にした、水素精製プロセスの開発。 食品ゲル、吸湿剤、デンプン・アクリル酸ナトリウムグラフト重合体、PVAで構成された分離膜の膜組成は、前年度までに最適化した。この膜は、温度:85℃, 全圧:0.7MPa, CO2分圧:0.56MPaの条件でのCO2とHeの分離において、選択性αが200前後であることが、前年度までの検討により確認済みである。2019年度は、この膜を、温度:85℃,全圧:2.4MPa, CO2分圧:0.96 MPaの実用化条件で、CO2とHeの分離性能を評価した。ここで、PVA単体の膜も別途作製し、同条件で評価した。結果、CO2とHeの分離に対して、開発した分離膜の選択性αは、20以上であった。また、PVA単体膜の選択性αは、2-4程度であった。これらの結果を基に、水素精製プロセスを開発した。 先ず、PVA単体膜を上側に、開発した分離膜を下側にした膜を用意した。開発した分離膜は、CO2分離膜であるため、高濃度のCO2が透過する。対して、Heの透過は制御される。すなわち、上側のPVA膜を透過したCO2は、開発した分離膜も透過するが、Heは透過できずに2枚の膜の中間部に蓄積する。このガスを回収することで、純度の高いHeの分離回収が可能となる。ここで、HeはH2の擬似ガスで用いたため、これら2枚の膜により、H2の分離回収にも対応する。以上、開発した分離膜に加えて、PVA単体の膜を用いることで、当初の目標であった、水素精製プロセスの構築が可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高圧で高い性能を示し、耐久性に優れた分離膜の膜組成を前年度までに最適化した。この分離膜を用いた水素精製プロセスの開発が、本研究課題の主目的である。この課題に対し、開発した分離膜とは別に、ガスの透過を抑制するポリビニルアルコール(PVA)単体の膜を作製した。すなわち、開発した分離膜とPVA単体膜の2枚の膜による、ガスの分離回収プロセスを提案し、開発した。2つの膜(開発した分離膜,PVA単体膜)の分離性能結果から、純度の高いH2の分離回収が可能であることが判明した。結果、開発した分離膜を用いて、水素精製が可能なプロセスを構築できた。以上の経緯から、本研究課題の進捗状況としては、「おおむね順調に進展している」といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の目標であった、①高圧で高い性能を示す、耐久性に優れた分離膜の開発、そして、②この膜を用いた水素精製プロセスの構築は、当初の計画どおりに、事業期間内に達成することが出来た。今後は、これまでの検討結果を整理し、積極的な外部発信を行う。特に、本研究課題の遂行において、高分子をベースとした、高性能なガス分離膜を開発できたため、それまでの検討結果を用いて、より多くの論文を作成し、投稿していくことを考えている。
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Causes of Carryover |
本研究課題の目標であった、「高圧で高い性能を示す、耐久性に優れた分離膜の開発」が、鋭意検討により可能になったため、この成果を学会等に出席して、発表を考えていた。しかしながら、出席を考えていた学会が全て中止となった。そのため、2019年度での旅費の使用が、当初の予定より少なくなってしまい、次年度での使用額が生じることになった。 本事業における当初の目標に対して、事業期間内にほぼ達成することが出来た。そのため、これまでの検討結果を整理し、学会発表、論文投稿等を行う。2020年度は、これら外部発信に必要となる支出を考えている。
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Research Products
(8 results)