2018 Fiscal Year Research-status Report
福島原発由来の放射性物質の生物濃縮リスク評価を目指して:漂着鯨類を活用した場合
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17K00642
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
田島 木綿子 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究主幹 (00450635)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和田 敏裕 福島大学, 環境放射能研究所, 准教授 (90505562)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ストランディング / スナメリ / 放射性セシウム / 福島原発 / 東日本大震災 / 保全医学 / 影響評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
茨城県ならびに千葉県の海岸で発見されたストランディング個体について、東日本大震災後に発見されたスナメリ13頭(震災後31から2185日後)と震災前に発見されたスナメリとカズハゴンドウ1頭それぞれの凍結乾燥筋肉中の放射性セシウム134Csと137Csを測定した。137Csは震災後のスナメリ全頭から日本の定める基準値以下ではあったが検出された(1.03から72.1 Bq/kg-wet)。特に震災直後2011年11月に千葉県で発見されたスナメリは他より高値(1620 Bq/kg-wet)を示した。134Csはスナメリ8頭で基準値以下ではあるがこちらも検出された。一方、震災前のスナメリとカズハゴンドウからは放射性セシウム134Csと137Cs共に検出されなかった。これらのことから確実に震災後の個体は、放射性セシウム134Csと137Csを体内に取り込んでいたことが明らである。しかし、同じ時期の魚類の値よりは低値を示した。同じく震災後に茨城県と千葉県で発見されたスナメリ5個体において、影響評価が比較的検出されやすいオス生殖腺(精巣)を用いて、電子プローブX線微量分析を実施したが、全ての個体の精巣から137Csは検出されなかった。今回解析した全ての個体で病理解剖は実施できなかったが、震災後のスナメリでは寄生虫性肺炎と吸虫性肝炎が観察されたが、死に至らしめる程度ではなかっ た。震災前のカズハゴンドウからは細菌性肺炎を観察したが、これは今回の解析とは相関性はないと考える。マッコウクジラは震災後であったが、こちらは幼体 であったため、直接の死因は親とはぐれたことであり、病理学的な所見は得られていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
震災後に発見された福島原発周辺のストランディング個体は、当時の状況を考えると、それほど多く回収することはできなかったものの、震災後と震災前で放 射性セシウムの値に「差」が出たことは、非常に大きな収穫であり、ここまでのところ順調に進んでいる。特に、水深20mほどの浅瀬に生息する小型の歯クジ ラであるスナメリから検出されたということは、震災後確実に彼らの体内に放射性セシウムが基準値以下ではあるものの、取り込まれたことが明らかである。 2019年12月にバルセロナで開催される世界海棲哺乳類学会でも発表することができそうであり、成果報告の面でもここまでのところ順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
・病理学的に観察された所見と放射性セシウムとは相関性は今の所見出せていないことが今後の課題なのかどうか検討する。表現形として出ていないのであれ ば、それはそれとして成果としてまとめる。 ・精巣を用いた電子プローブX線微量分析は引き続き検体数を増やして解析を継続する。 ・スナメリは日本に5系群生息するため、他の系群もコントロールとして解析を実施し、地域性を強調するデータを揃える。 ・震災後の当該地域の個体はこれ以上数を増やすことはできないが、体内分布を解析できるか?放射性セシウムの取り込み経路(海水か餌生物か)を検討する。
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Causes of Carryover |
放射性セシウム解析が思った以上に時間を要し、さらに、当該ストランディング個体のサンプル整理が当初計画より実行できず、予算を使いきれなかった。そのため最終年度へ繰越、積極的にサンプル整理を行い、放射性セシウム解析に供するサンプルを選別する。
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Research Products
(9 results)