2021 Fiscal Year Research-status Report
農薬管理制度の国際的調和(Harmonization)に向けて
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17K00681
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
吉田 央 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40251590)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 農薬管理 / 多国籍企業 / FAO / 農薬の流通と使用に関する国際行動規範 / OECD多国籍企業行動指針 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、発展途上国の農薬管理における農薬企業の果たすべき役割について考察を行った。農薬は、適正に使用すれば農業に有益な農業資材であるが、不適切に使用された場合には、農業従事者への健康被害、害虫・雑草の抵抗性の発現、環境汚染・生態系破壊、農薬の食品残留などの様々な問題を引き起こす。このような農薬による問題の発生を防止するためには、政府による適切な規制が行われ、農業従事者に農薬に関する知識が正しく伝えられて農業従事者が農薬を正しく使用できるようにすることが必要である。 しかし、現実には発展途上国における農薬の規制に必要な政府の能力、とりわけ科学的能力は不足しており、また農業従事者の教育・知識も不十分である。そこで、発展途上国において農薬を販売する企業は、自らが販売した農薬が問題を引き起こさずに正しく使用されるようにする責任を負っていると考えられる。 多数の発展途上国が政治的独立を勝ち取った1960年代から、先進国に本拠地を持つ多国籍企業が、発展途上国において搾取的・帝国主義的な活動を行っていることが問題視されてきた。1975年には、国連に多国籍企業センターが作られ、多国籍企業の行動に対する監視がはじめられた。翌年の1976年には、OECDも「OECD多国籍企業行動指針」を策定し、先進国の多国籍企業に対して、企業に対して期待される責任ある行動を自主的にとるよう勧告した。 1985年にFAOが「農薬の流通と使用に関する国際行動規範」を採択し、農薬メーカーに対して不当な広告の禁止などを定めた。FAO行動規範は1989年、2002年、2013年に改定が行われ、その性格も変化しつつあるが、農薬メーカーの責任は徐々に重くなってきているといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度に引き続き新型コロナ感染症蔓延のため、海外調査や海外での研究発表を行うことはできなかった。また(昨年度ほどではないにせよ)オンライン授業への対応など通常業務を越える負担もひきつづき発生しているため、残念ながら予定していた研究より遅れている状況であると言わざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
当面は海外調査の実施は難しいと予想されるため、日本にいながらできる文献調査を中心にして研究を進める予定である。昨年度にひきつづき、多国籍企業の責任に関する研究を中心テーマとして継続し、まとまった形に仕上げることを目標とする。
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Causes of Carryover |
2021年度は、新型コロナ感染症蔓延のため海外出張等が実施できなかった。2022年度は状況が変わるかもしれないので、2022年度に次年度使用を予定することとした。
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