2018 Fiscal Year Research-status Report
グローバルな視点からの日本の環境影響評価制度の再検討ー「国際標準」との差異の分析
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17K00686
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
増沢 陽子 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (90351874)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保 はるか 甲南大学, 法学部, 教授 (50403217)
遠井 朗子 酪農学園大学, 農食環境学群, 教授 (70438365)
児矢野 マリ 北海道大学, 法学研究科, 教授 (90212753)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 環境影響評価 / EIA / 国際標準 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度はまず、前年度の検討を基に、環境影響評価(EIA)制度に係る国際標準の同定のための枠組みを作成した。すなわち、EIAに関し多数国間条約体制及び/又は多くの先進国が採用している制度・考え方等を「国際標準」と捉え、現在の日本のEIA制度において課題と考えられるいくつかの視点・側面について、国際法・規範及び他の国地域の国内(域内)法上の制度等の状況を調査するとともに、日本との比較を行うこととした。「他の国地域」としては、関係国の数や地理的な分布等を考え、米国、EU及びニュージーランドを中心とした。なお、本科研研究においては、研究対象とする「EIA制度」を、政府の意思決定に関連して環境への影響を評価する制度を広く含むものと考えている。 この枠組によりメンバーで分担して調査を行い、その結果を10月に開催した研究会においてそれぞれ報告し、議論を行った。この調査・検討を踏まえて、垂直的・水平的な国際比較から見た日本のEIA制度の特徴やその背景について、2019年4-5月に開催される国際影響評価学会(IAIA)の年次大会(IAIA19)において報告を行うこととし、その申込みが受理された。 以上の全体的な比較研究と並行して、EIA制度の国際的な発展の最新の状況を把握する等のため、2019年2月に開催されたUNECE越境EIA条約(エスポー条約)締約国会合に参加し、情報収集・実務専門家との意見交換等を行った。また、EIA制度の一形態ともいいうるEUの影響評価(IA)制度について、調査を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
国際法・外国法の調査を通じた国際標準の同定と日本制度の比較については、着実に進展しているものの、外国法(他の国・地域の法制度)の状況に関する現地調査については、文献調査に時間を要したこと等から2018年度内の実施に到らず、翌年度に実施することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、4-5月に開催されるIAIA19に出席し、本研究で行ってきた垂直的・水平的な国際比較を踏まえた、日本のEIA制度の特徴とその背景等について報告を行うとともに、EIA制度に関する国際的な議論の動向について情報収集を行う。ここで得られた知見等は、今後の研究にフィードバックしていく。 また、これまでの研究では、水平方向での国際比較は文献調査のみに基づいているところ、今年度は、他の国・地域のEIA制度に関して現地調査を行い、制度の意義や実施状況についてより詳細な検討を行う。一方で、日本のEIA制度の中で、課題が多い等注目すべき一定の分野については、国際比較からの示唆を得ながらその改善・発展の方策を検討する。これらの調査研究を、国際標準の精査及びこれとの比較を踏まえた日本法のあり方の検討の深化に繋げる。 これらの研究の成果については、公開での研究会を開催して報告・議論を行い、メンバー以外の参加者からも批判や助言を得て、さらに改善を図る。研究論文の執筆・公刊を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、2018年度中に実施することを予定していた他の国・地域のEIA制度に関する現地調査について、文献調査を含め準備に時間を要することなどから次年度に実施することとした等、2018年度は文献調査が主体となったことが大きな理由である。 2019年度には、なるべく早い時期に、EUにおけるEIA制度に係る現地調査を実施することとしている。また、国内のEIA制度のあり方についてより具体的に検討するため、国内における現地調査を含めたケーススタディの実施についても検討する。
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