2020 Fiscal Year Research-status Report
グローバルな視点からの日本の環境影響評価制度の再検討ー「国際標準」との差異の分析
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17K00686
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
増沢 陽子 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (90351874)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保 はるか 甲南大学, 法学部, 教授 (50403217)
遠井 朗子 酪農学園大学, 農食環境学群, 教授 (70438365)
児矢野 マリ 北海道大学, 法学研究科, 教授 (90212753)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 環境影響評価 / EIA / エスポー条約 / SEA指令 |
Outline of Annual Research Achievements |
国際法上の環境影響評価(EIA)に関し、この分野を牽引する国連欧州経済委員会・エスポー条約について、最新動向も含め実証分析作業を継続した。同条約の締約国会合(オンライン)にて参与観察を行うとともに、条約採択30周年記念パネルで招待講演を行い、専門家と討論等を行った。また、天然資源・エネルギーの利用に関する国際条約のうち、国連海洋法条約の下におけるEIAの実施義務やその実施要請について、最新動向に関する文献調査を行った。これは、日本のEIAに関する現行の法体制の評価における1つの軸となりうる。 生物多様性分野については、生物多様性の配慮をEIAに統合するための具体的政策手法について関連文献等のレビューを行い、国家・国際開発援助機関の実践を標準化し、環境条約の目的とEIAとを関連づける上で、生物多様性条約の任意的指針(2006)が一般に参照されていることを確認した。また、当該指針の構成要素を分析し、生物多様性の配慮を適切に行うため、EIAの制度設計において留意すべき点を同定した。 EUのEIA制度については、戦略的環境アセスメント(SEA)指令の対象となる「計画及びプログラム」の意義に関し、欧州司法裁判所の裁判例及びこれを巡る議論を中心に分析を行った。その結果、SEA指令の対象については、かなり幅広いものを含みうるものとして解釈されているが批判もあることが認められた。これらは、日本で計画・プログラムレベルのEIA制度を考える上で、一つの参考となる。 一方、EIA制度は評価制度の一つともいえることから、評価研究一般に関する議論を整理するために、既存研究の文献調査を行った。とりわけ、意思決定プロセスにおいて 事前評価が果たしうる機能に注目して論点を整理した。また、日本のEIA制度における環境省の関与の実態を把握するために、情報公開請求資料などを活用して分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、学会の年次大会において本研究の成果に関する企画セッションを予定していたが、当該大会の主要部分が新型コロナウイルス感染症問題の影響により延期され、最終的にその年度内の実施が見送られた。このため、本企画セッションの開催、及びそこでの議論を踏まえた更なる検討等についても、翌年度に行うこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度に開催される学会大会において企画セッションを行い、本研究のこれまでの成果に関し発表を行うとともに、依頼した本研究グループ外部の専門家からコメントを得、また会場の参加者(環境法政策の研究者等)からも批判・助言を得る。こうした議論を踏まえ、追加的な情報・資料の収集も行いながら、論点のさらなる分析・検討等を進める。得られた研究成果について、論文の執筆・公表を行う。
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Causes of Carryover |
2020年度は、新型コロナウイルス感染症問題の影響により、企画セッションを予定していた学会大会の対面での開催が延期されたことから、これに関する旅費や、学会での議論を踏まえての研究のために必要な経費等を繰り越すこととなった。 2021年度は、学会企画セッションの実施に関わる費用、さらなる分析・検討に必要な書籍等の物品の購入費用、感染症等の状況にもよるものの調査等に係る旅費、等として使用する予定である。
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