2018 Fiscal Year Research-status Report
日本酒産業を活性化する日本酒味わい表現と味わい表現変換法を科学的にデザインする
Project/Area Number |
17K00743
|
Research Institution | Hyogo University of Health Sciences |
Principal Investigator |
前田 初男 兵庫医療大学, 薬学部, 教授 (00229311)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
甲谷 繁 兵庫医療大学, 薬学部, 教授 (00242529)
塚本 効司 兵庫医療大学, 薬学部, 講師 (00454794)
石崎 真紀子 兵庫医療大学, 薬学部, 研究員 (20623979)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 日本酒 / 味わい / 形容詞対尺度 / 意味微分法 / 色彩イメージ |
Outline of Annual Research Achievements |
初期設定した形容詞対尺度を用いて実施した意味微分法により得た日本酒味わいと色彩イメージの評価スコアを因子分析した結果を踏まえ、16種類の形容詞対尺度を新たに設定した。これらの形容詞対尺度を用いた意味微分法により、改めて、日本酒15種類の味わいと色彩28種類のイメージを評価した(20歳代22名、50歳以上22名)。日本酒味わいと色彩イメージの評価結果をスコア化し、プロマックス法により因子分析した。その結果、16種類の形容詞対を第1因子、第2因子、第3因子に分類できた。日本酒味わいにおける第1因子の1つとなった形容詞対尺度「女性的な←→男性的な」と、色彩イメージにおいて第1因子の1つとなった形容詞対尺度「陽気な←→陰気な」におけるスコアは、良好な分散を示した。すなわち、日本酒味わいまたは色彩イメージの評価スコアに優位な広がりが認められたのは、この2つの形容詞対尺度だけであった。そこで、日本酒味わいまたは色彩イメージとして得られた2つの形容詞対尺度スコアを XY プロットしたところ、どちらの XY グラフにも良好な相関が認められた。また、日本酒について得られたXYグラフを、色彩イメージについて得られたXYグラフへ、相似投影することにより、15種類中7種類の日本酒の味わいを色彩へ変換することに成功した。 一方、NMR-DOSY法により日本酒15種類から得られた、ある特定のプロトンに由来する自己拡散係数が、日本酒の味わいについて得られた形容詞対「女性的な←→男性的な」スコアと良好な相関があることを見出した。 上記の結果から、味わい評価を実施することなく、日本酒の自己拡散係数を測定すれば、日本酒の味わいを形容詞対尺度「女性的な←→男性的な」上へ表現変換できるだけでなく、日本酒の味わいを色彩に変換できると考えられ、現在、上記の15種類以外の日本酒を用いて、この考えを検証しつつある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、日本酒の揮発性成分解析結果、またはNMR-DOSY法により測定できる自己拡散係数と、意味微分法により得られる日本酒味わい評価スコアまたは色彩イメージ評価スコアとを、直接的に連結できると考えていたが、揮発性成分解析および自己拡散係数測定における再現性の確立や、日本酒味わい評価スコアと色彩イメージ評価スコアとの連結法の設計と検証に、予想以上に時間を要したため、研究は計画よりやや遅れている。 また、日本酒味わい評価実験を、被験者の健康状態を鑑み、1ヶ月に1回5種類の日本酒に限定して実施したことから、一人の被験者から15種類の日本酒すべてについてデータを取得するために3ヶ月を要した。その結果、色彩イメージ評価実験を加えると、一人当たり4ヶ月も掛かったことも、研究の進捗に少なからず影響した。 しかし、時間が掛かったが、これまでに得られたデータを注意深く解析し、全く新しい考え方に基づいた連結変換法を設計・検証することにより、それぞれの日本酒または色彩について得られた形容詞対尺度「女性的な←→男性的な」におけるスコアをX軸に、「陽気な←→陰気な」におけるスコアをY軸にプロットすることにより、日本酒味わいを色彩へと相似投影できることを見出したことから、現在の遅れは、次年度に挽回できると期待している。
|
Strategy for Future Research Activity |
【日本酒味わいを表現する最適な形容詞対尺度の確立と、日本酒味わいの色彩への投影法の最適化】形容詞対尺度「女性的な←→男性的な」「陽気な←→陰気な」に加え、因子分析において、これらの形容詞対とともに第一因子に包含された形容詞対を踏まえ、新たな形容詞対尺度を合計10程度を再構築する。再構築した形容詞対尺度を用いて、新たに選定した15種類の日本酒の味わい、ならびに色彩イメージについて評価実験を実施し、日本酒味わい表現尺度として最適な形容詞対尺度を確立するとともに、その形容詞対尺度上に表現された日本酒味わいを、色彩へ投影する方法を最適化する。 【自己拡散係数から日本酒味わいを形容詞対尺度へ、そして形容詞対尺度から日本酒味わいを色彩へ変換】NMR-DOSY法により得られた、ある特定のプロトンに由来する自己拡散係数が、日本酒の味わいについて得られた形容詞対尺度「女性的な←→男性的な」スコアと良好な相関があることを見出した。この結果を検証するため、新たに選定した15種類の日本酒について、同様に、自己拡散係数を測定し、形容詞対尺度「女性的な←→男性的な」上スコア、または新たに加えた形容詞対尺度上スコアとの相関を検証する。その結果に基づき、自己拡散係数の値から、日本酒の味わい表現に最適化した形容詞対尺度上への表現変換法、ならびに形容詞対尺度上の位置から日本酒味わいの色彩への変換法を確立する。 【自己拡散係数の代替指標としての揮発性成分情報の活用】最適化したGC-MS法を用いて、これまでに用いた15種類に加え、新たな15種類の日本酒、つまり合計30種類のフレッシュな日本酒について、成分分析を行う。その解析結果と、形容詞対尺度「女性的な←→男性的な」上スコア、または新たに加えた形容詞対尺度上スコアとの相関を検証し、自己拡散係数と同様に、日本酒味わいの形容詞対尺度上への変換法としての可能性を検討する。
|
Causes of Carryover |
意味微分法により評価した日本酒の味わい、または、色彩イメージの結果について、より複雑な統計処理をするに至らなかったため、ハイスペックのパソコンと最新の統計処理ソフトSPSSの購入を躊躇したため、計画通りに予算執行できなかった。しかし、「女性的な←→男性的な」「陽気な←→陰気な」のような2組の形容詞対尺度を組み合わせることにより、日本酒の味わい表現を色彩に変換する新規な投影法を確立しつつあること、日本酒味わいを単純に表現できる形容詞対尺度を提案できつつあること、などを踏まえ、最終年度には、より多くのデータを収集するとともに、それらについて高度な統計処理を実施し、本研究の目的を達成するために、平成30年度に購入予定であったハイスペックパソコンと統計処理ソフトを次年度の夏までに購入する予定である。
|
Research Products
(1 results)