2017 Fiscal Year Research-status Report
Effects of high hydrostatic pressure on physical and cooking properties of barley flour
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17K00811
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
上野 茂昭 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (80410223)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 高圧処理 / 大麦粉 / 粘度 / デンプン |
Outline of Annual Research Achievements |
大麦は水溶性食物繊維(βグルカン)を多く含み,コレステロール低減作用および心疾患予防効果などの高い健康機能性を有する.しかし,小麦粉の3倍ほどの高い粘度を示すことから調理加工性が低く,大麦粉の利用拡大の障壁となっている.本研究では非加熱処理である超高圧処理を大麦粉に適用し,デンプンを主とした大麦粉の構成成分の物理化学変化により,高βグルカン大麦粉の品質制御技術を開発することを目的とした. βグルカン含量の異なる2 種類の大麦粉(埼玉県栽培指定品種の高βグルカン品種「もっちりぼし」,飲料用低βグルカン品種)を試料として選択した.これらの大麦粉に等量の水を加えた大麦粉生地を調製し,真空包装後20℃で10分間の高圧処理(200~600 MPa)を施した.高圧処理後の大麦粉試料について,RVAを用いて物性を測定するとともに,顕微鏡でデンプン構造を観察した.またβグルカン含量およびデンプン損傷率を評価した. 大麦粉に550MPaおよび600MPaの圧力を加えることで,粘度が低下した.その原因がデンプン構造にあると考え,顕微鏡を用いて観察したころ,橙色に染色されるアミロペクチンで構成されたデンプン粒は,400MPaおよび600MPaの試料でひびや割れが認められた. これはアミロペクチンが形成する結晶構造が,高圧処理によって破壊されたためと考えられた.続いて,高圧処理によるデンプンへの影響を明らかにするために,酵素法を用いてデンプン損傷率を測定した.その結果,デンプン損傷率は500~600 MPaの圧力領域で増加した.デンプンが損傷を受け,粘度が低下した大麦粉試料のβグルカン含量を測定したところ,いずれの圧力領域においてもβグルカン含量は未処理試料と同等であった.以上より高圧処理を用いて,非加熱かつβグルカン含量を変化させることなく,大麦粉の粘度を制御可能であることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書においては,H29年度は「高βグルカン大麦粉の粘度低下技術の開発」として,圧力条件の検討および物理科学特性の評価を計画していた.試料は,βグルカン含量の異なる2 種類の大麦粉(埼玉県栽培指定品種の高βグルカン品種「もっちりぼし」,飲料用低βグルカン品種)を選択した.また申請書に従って,高圧大麦粉試料の物理特性として,粘度計(ラピッドビスコアナライザーRVA4,Foss 社)を用いて昇温プログラム下において粘度測定を行った.また,デンプンの顕微鏡観察についても計画通りに行った.現在,これらの成果を投稿論文として準備中である.以上より,おおむね順調に進展していると評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
高圧処理を用いて,非加熱かつβグルカン含量を変化させることなく,大麦粉の粘度を制御可能であることが分かった.これらの高圧処理を施した試料について,その適用性を評価することを今後の第一課題とする. 具体的には,まず溶解度および膨潤力を測定する.これらの指標は大麦粉のみならず粉体を食品工業に応用する際に,製品品質の尺度のひとつとして利用されている.また,大麦粉の粘度低下メカニズムを明らかにするために,X線を用いた構造解析を行う.
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Causes of Carryover |
大麦粉の粘度低下のメカニズムを解明するためには,デンプン以外の成分分析が不可欠となる.H29年度においては,デンプン以外の成分について,多成分を同時に測定可能であるLCMSを購入させて頂いた.この装置は,MSのみならずフォトダイオードアレイを装備している.本装置を購入する際,運送・設置の点で当初計画よりも低価格で行うことが出来たため,次年度使用額が生じた.次年度使用額は,本研究成果の公開(論文投稿,学会発表)に用いる予定である.
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