2019 Fiscal Year Research-status Report
ゼロリスク志向の形成過程の探究:その測定尺度の開発と規定要因の定量的検討
Project/Area Number |
17K01015
|
Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
新田 直子 (加藤直子) 統計数理研究所, データ科学研究系, 特任研究員 (20377120)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
立川 雅司 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (40356324)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 科学コミュニケーション / リスクコミュニケーション / 社会調査 / 計量分析 / 科学技術リテラシー / ゲノム編集 / 消費者意識 / 食品安全 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に実施した自書式の紙ベースによる質問紙調査の結果を踏まえて、今年度は調査会社が保有するパネルに対する実験的なインターネット調査を実施し、リスク意識尺度の信頼性と妥当性の確認を行った。また、その結果について、国内学会および国際学会で発表した。 本研究課題のこれまでの成果をまとめた原著論文が英文国際学術誌に掲載された。本論文は、食品安全に関する人々のリスク意識について、ベネフィット意識および価値意識との対比のもとにその規定要因を定量的に検討した論文である。この論文は、本研究課題の目標である食品安全に関するより精緻化したリスク意識尺度を用いるだけでなく、さらに一歩踏み込んで、科学コミュニケーション研究における「欠如モデル」の境界条件を明らかにするとともに、2つの新たな仮説を提示するものであった。すなわち、(1)欠如モデルの前提は、従来の科学・技術に対しては有効であるが、新興の科学・技術に対しては有効ではない、(2)欠如モデルの前提を新興の科学・技術に適用した場合、ベネフィット意識の向上に対しては有効であるが、価値意識の向上やリスク意識の低減に対しては有効ではない、である。本論文は、複数の英文ニュースメディアに取り上げられ、国際的な反響を得ている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
開発したリスク意識尺度について、複数の調査モードによりその信頼性と妥当性を確認することができたこと、またその結果をまとめた論文が最終年度を待たずに英文国際学術誌に受理および公刊されたことから、「(1)当初の計画以上に進展している。」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度である2020年度は、これまでに得られた成果について科学コミュニケーション・リスクコミュニケーションおよび社会調査関連の国内学会および国際学会等で発表・報告を行う予定であった。そのなかで、国際会議の多くは、2019年度末までにすでにアブストラクトが受理されていた。しかし、新型コロナウィルスの影響により、発表を予定していた国際会議はすべて2021年度に延期となった。そのため、研究の成果発表は来年度に行うこととし、今年度はさらに研究を発展させるための計量社会調査を実施する予定である。
|
Causes of Carryover |
計量社会調査実施分が予定より安価に実施できたことから、次年度使用額が生じた。最終年度に予定しているより大規模な計量社会調査においてサンプル数を増やす、あるいは国際比較調査として実施するなど、調査の信頼性と妥当性を向上させるためにこの次年度使用額を用いる予定である。
|