2019 Fiscal Year Research-status Report
科学筆記が呈する明治期教育改革の国際的関連 -科学と科学教育の関係性に着目して
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17K01022
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
興治 文子 東京理科大学, 教育支援機構, 准教授 (60409050)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 昭三 新潟大学, 人文社会科学系, 名誉教授 (10018822)
種村 雅子 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (30263354)
土佐 幸子 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (40720959)
岡野 勉 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (30233357)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 小学校生徒用物理書の使用実態 / 後藤牧太 / 明治期 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに全国の古文書館から得られた明治中期の生徒の物理筆記を基に研究を続けてきたが、改めて文書館のデータベースを検索すると新規の筆記を発見することができた。これは、新規で文書が持ち込まれたり、保存していた資料のデータベース化が進んだことによる。いくつかの文書館を訪問し、歴史的価値のある文献データを手に入れることができたが、基本的にはこれら新規の筆記の内容を閲覧するためには現地を訪問する必要があるため、訪問した文書館の数は限定的であった。 中国の物理教育にも影響を与えた後藤牧太が小学校向けに記した『小学校生徒用物理書』の使用実績について、全国各地の資料館から得られたデータや入手した古書を基に総括を行った。その結果、同書の著者らが深く関わりのある群馬県のみならず、少なくとも埼玉県、静岡県、新潟県で使用されていたこと、明治32年という遅い時期まで使用されていた証拠を見出した。 また、山口県の師範学校でも後藤牧太の記した教科書を使用したと考えられる筆記が見つかっており、師範学校の卒業生らが簡易実験も含めて日本の物理教育に与えた影響と、中国やアジア圏における影響について検討中である。 さらに、明治期の日本における産業改革や技術教育について、日本の研究者のみならず欧州の研究者も着目しており、当該分野の研究者と意見交換をすることで新たな視点を得ることができた。特に、工部大学校の卒業生も中等教育の教員として就職している例もあったり、工部大学校の学生の精密な鉱山実習の観察記録なども残っていたことがわかった。 これまでの研究では、理学、理工系における物理教育の進展について焦点を当てていたが、工学的な高等教育の側面からも日本の物理教育の在り方を研究することで、より明治期の国際社会における日本の物理教育の実態や特徴を明らかにできる見通しを立てることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小学校生徒用物理書の全国的な使用実態について論文としてまとめることができた。また、高等小学校生徒の筆記の分析による明治期の日本の理科教育の実態の総括について英語論文にまとめ、国外へ発信することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
工部大学校の卒業生で中等教育の教員になった例や、東京大学仏語物理学科の1期生である櫻井房記、東京帝国大学1期生の小川正孝など、一時期中等教育の教員になった例もある。櫻井と小川に関しては、彼らが教えた物理の授業筆記も入手している。 これまで見てきた後藤牧太らの師範学校の卒業生が物理教育の発展に与えた影響と、工部大学校や東京大学などの卒業生が物理教育の発展に与えた影響について、留学や翻訳書の輸出など国際的な関連を考慮しながら研究成果をまとめてゆきたい。
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Research Products
(12 results)